白隠は、観音菩薩と並んで文殊菩薩も多く描いた。白隠の描く文殊菩薩は、観音菩薩同様女人のイメージで描かれている。文殊菩薩といえば、釈迦三尊の一員として普賢菩薩と並んだ姿とか、西大寺の文殊菩薩のように眷属を引き連れた勇ましい姿で描かれることが多いが、白隠は観音菩薩同様、女人のイメージで単身の姿を描いたのである。
これは獅子の上に乗った文殊菩薩の像。獅子は文殊菩薩固有の乗り物である。普通はその獅子に跨った姿で描かれるところを、白隠は文殊菩薩を女人のイメージで描いたために、このように獅子の上に座った姿にしたのだろう。
賛には、「去劫七仏師範、霊山八萬参頭、幼孩垂翠楊髪、獅子凝紫電眸、横拈妙法蓮華、忘却金剛利刀、欲知陀真面目、人々具個々周」とある。また落款に「明和第四」とあるところから、白隠八十三歳の作だとわかる。
これは上半身を拡大したもの。表情や頭上の飾りものは観音菩薩のそれとよく似ている。両手で掲げているのはお経の巻物だろう。
(紙本墨絵 117.2×48.1cm 個人蔵)
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