お福御灸図:白隠の漫画

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お多福女郎が客の尻にお灸を据えているユーモラスな図柄のこの絵には、「痔有るを以てたつた一と火」なる賛がある。そのまま虚心に読めば、「痔があるのでたった一つの火で治療してやろう」となるが、その裏には別の意図が隠されているという。この言葉は、当時の寺子屋の教科書でよく使われた言葉、「人肥えたるが故に貴からず、智有るを以て貴し」をもじっているというのである。

「痔有るを以てたつた一と火」をかなで書くと、「ちあるをもってたつたひとひ」となる。これを当時の江戸っ子弁で言うと、「ちあるを以てたつたしとし」となり、それをさらに文字で表すと「智有るを以て貴し」となるわけである。

白隠がこんな意味深な賛を書いたのは、当時の金満の風潮があったのだと思われる。絵のなかで男の着物に金という文字が書かれているが、これが二つ重なって「金金」となる。「金金」とは金満を象徴する言葉だというわけだ。

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これはお灸を据えるところを拡大したもの。お多福女郎が、突き出された男の尻にお灸を吸えるところだ。お灸を据えることでなおるのは、痔ばかりでなく金満病もだと言いたげである。

(紙本墨画彩色 56.7×64.5cm 永青文庫蔵)




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