鍾馗図:白隠の漫画

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白隠は鍾馗の図を数多く描いている。鍾馗は厄除けの神として親しまれ、端午の節句には子どもの厄をはらう守護神として尊重された。もともとは、中国に実在した人物で、それが神になったにはいわれがある。玄宗皇帝のときに科挙を目指したが落第を重ね、それを恥じて宮中で自殺した。ところが、どういうわけか、重い病気にかかった玄宗の夢の中に現れ、玄宗を悩ませていた悪鬼を追い払ったところ、玄宗の病気が治った。それに感謝した玄宗が、画工に鍾馗の姿を描かせて顕彰した。それ以来厄除けの神として庶民に慕われたというのである。

白隠はこの伝説に感じて、鍾馗をテーマにした絵を数多く描いたわけである。この絵は、体を横向けにして、目だけをこちらに向けている鍾馗を描いたもの。衣は太い墨の線でざっくりと表現され、顔は薄墨で描いた上に、目玉や冠などポイントを強調している。

賛には「或ひは玉殿廊架のした、つるぎをひそめて忍び忍びに」とある。これは謡曲鍾馗のキリの部分の一節で、発起菩提心を起した鍾馗が、国土安穏の誓いを発したところを謡っている。

このことからも、白隠の描く鍾馗図は、発起菩提心の象徴であることがわかる。

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これは鍾馗の上半身を拡大したもの。顔の輪郭と言い、ぎょろりとした目玉と言い、達磨の横顔に似ている。これもまた白隠の自画像と考えられる。

(紙本墨画 134.2×56.8cm 個人蔵)






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