鷲頭山図:白隠の禅画

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鷲頭山は、伊豆半島の西側の付け根にあたるところにある。白隠が住職を勤める松陰寺からは、富士同様によく見える山だ。しかもこの山は仏教伝説ともゆかりがあるというので、白隠は特別の気持を抱いていたにちがいない。この山を描いた絵に、そうした白隠の気持ちが籠められている。

仏教伝説では、釈迦が最初に説教をしたところが鷲頭山だったとされる。禅宗ではその霊山授記をことのほか尊重するという。

この絵は、遠景に鷲図山を、近景に船で漁をする人々を描いている。恐らく沼津の海であろう。山の頂上付近には巨大な鷲がとまっていて、漁をする人々を見下ろしている。鷲は釈迦の分身で、衆生の教化にいそしんでいるようにも見える。

賛には「見上げてみれば鷲頭山、みおろせばしげ鹿浜のつり舟」とある。この地方で歌われていた作業歌の一部らしい。しげは志下、鹿浜は獅子浜のことで、どちらも沼津付近の地名だという。

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これは山の頂上近くの部分を拡大したもの。強大な鷲が岩の上にとまり、下を見下ろしているさまが描かれている。

(97.3×29.9cm 個人蔵)







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