ゆきづまる安倍外交

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このところ安倍政権が、すっかり元気がないように見える。例のスキャンダルで支持率が激減したことにショックを受けたのかもしれないが、へこたれている場合ではないだろう。国際情勢は、北朝鮮の挑発などで緊迫しているし、いまこそアジアの大国としての日本の出番だというのに、すっかり影が薄くなっている。安倍政権は、北朝鮮の危機を解決するには、中国が北朝鮮への圧力を強化すべきだなどと、トランプと全く同じこと(他人事のようなこと)を言って、習近平の反発を食らっている。また、北朝鮮危機では最も緊密に連携しなければならない韓国との間でぎくしゃくした関係を続けている。その結果、北朝鮮に対して有効な対策が打てないでいる。要するに主体的な外交ができていないのだ。

これは、伝統的な対米一辺倒の日本外交を、さらに対米一辺倒に深化させたことの結果と言える。その対米一辺倒は、オバマの時代には一定の効果を上げたが、トランプに代わってからは、日本への逆風となって働いている。トランプは、ロシア問題等をめぐってヨーロッパ諸国と対立することが多くなり、それに内向きの外交政策が重なって、国際社会での影響力を急速に失いつつある。そんなかで一人安倍日本だけが、あいかわらずアメリカにぶら下がり続ける意思を示しているわけだが、それを見透かされて、軽くあしらわれる事態が目立ってきている。

安倍首相が最も執心だった対ロ関係では、領土問題に何らの進展がないままに、経済協力だけつまみぐいされそうなありさまだし、対中関係の分野でも、今までの対中敵視政策が災いして、相互の信頼関係を築けないでいる。韓国との間では、従軍慰安婦や徴用工の問題をめぐって対立の火種が再び燃え上がろうとしている。要するに、対米関係を除いては、全くのデッドロックに乗り上げているといってよい。その対米関係も、日米間に正式なインフォメーション・ルートがまだできていないありさまだ(国務省の日本担当の公職はいまだに空位のままだ)。

近隣外交がこのざまだから、そのほかの国際関係をめぐる問題については、日本の存在感はゼロに近い。いままでも、日本が独自に自分の存在感を高めようとしてきたというより、アメリカの尻馬に乗ってきただけだから、日本独自の外交などないも同然だったわけだが、そのアメリカという馬がずっこけてばかりいるので、それに乗っている日本としては、落とされないよう必死になるだけですべてのエネルギーを使い果たしているといった具合だ。

これには、安倍首相の見込み違いも働いているのだろう。対ロ関係をめぐり一時は、アメリカの意向に逆らっても日本の意思を通そうとするような身振りも見せたが、最近では、その身振りをプーチンに見透かされて全く相手にされていないというのが実情だ。先般のG20の場で、日ロ首脳会談の約束時間を無視されて、長々と待たされたことなどは、その象徴的な表れだと言える。

つまり、安倍首相はもはや、日本の外交のかじ取りを期待できるような状態でない。せめて安倍首相に期待したいのは、外交上の負の遺産を次の政権に引き継がぬよう、これ以上余計なことは一切しないということだ。





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