人丸図:白隠の文字絵

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これは万葉歌人柿本人麻呂の文字絵。白隠はこの図柄のものを結構の数作っている。柿本人麻呂は単に「人丸」とも言ったが、「ひとまる」が「火とまる」を連想させるところから、火災よけの神として庶民に信仰された。白隠はそんな信仰心に応えて、人丸の文字絵を量産したのだろう。

文字絵の文字は、「ほのぼのとあかしの浦の朝霧に嶋かくれゆくふねをしぞ思ふ」である。人麻呂の作として古来人口に膾炙していたものだ。

左手の賛には、「焼亡はかきの本まで来れどもあかしと云へば爰に火とまる」とある。「火の勢いが垣根までせまってきたが、人麻呂のあかしの歌を念じたら、そこでとまってしまった」という意味である。

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これは人丸の上半身の部分を拡大したもの。やはり歌の文字がばらばらに分解されて散りばめられているのがわかる。

(紙本墨画 41.9×53.0cm 個人蔵)




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