トランプの次の恩赦は自分自身か?

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トランプが、アリゾナの元保安官で刑事訴追を受けていたアルパイオを恩赦したことについて、ポール・クルーグマン教授は、ニューヨークタイムズのコラムの中で、これはアメリカ流ファシズムの始まりだと批判している。アルパイオのやった行為が、メキシコからの移民を不当に拘束し、彼らをコンセントレーションキャンプ(アルパイオ自身の言葉)へぶち込み、そこで拷問まがいのことをやったことからすれば、その行為の残虐性はナチスの強制収容所と大差ないし、ファシズムと言ってもよい。それを大統領のトランプ自ら礼賛し、法の支配の原則を無視して、アルパイオに恩赦を与えたわけだから、クルーグマンの危惧も一理あると言えよう。

クルーグマン教授は、今回のトランプの恩赦は、ロシアスキャンダルにかかわった人々への目くばせだと分析している。特別検察官に調査され、そこで嘘を言って訴追されても心配するな、俺が恩赦で助けてやるから、俺に都合の悪いことは一切言うな、という合図を、送っているというのである。

だがもう一歩踏み込んで、こうも考えられるのではないか。つまり、次の恩赦を自分自身に適用するということだ。実際トランプは、自分自身を恩赦することの政治的な意義について、執拗に知りたがっていたというから、その可能性がないわけではない。米大統領の恩赦権限は無制限ということらしいから、法的に宣告された自分自身の罪も恩赦でパーにすることができるのである。

クルーグマン教授のほうは、トランプはむしろ特別検察官のマラーを解任する可能性を探っているのではないかと推測する。アルパイオへの恩赦があまり深刻な反響に結びつかなければ、その可能性は否定できないだろう。実際いまのところ、共和党の一部がトランプの今回の行為について批判しているとはいえ、あまり強い口調ではないし、大部分の共和党議員は口をつくんだままである。

だからトランプが、思い切ってマラーの解任に踏み切る可能性は大きいし、また解任に失敗したときは、自分自身に恩赦を与えることになるのだろうと思われる。いずれにしても、アメリカの法治主義は、トランプのおかげで地に落ちたわけだ。クルーグマン教授がアメリカ流ファシズムの勃興について危惧するのも無理はない(もっともトランプは、その前に失脚する可能性のほうが大きいと、情報通の間ではささやかれているようだ)。






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