歓喜の歌:クリムトのベートーベン・フリーズⅢ

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クリムトのベートーベン・フリーズ第三の壁画は、第九交響曲の第四楽章をイメージ化したもの。人類が敵対する勢力との戦いに勝利した喜びを描いている。大勢の合唱団が歓喜の歌を歌い、その手前では、合唱を浴びながら男女が抱擁しあう。合唱のイメージはともかく、男女が抱き合うことで喜びをあらわすというのは、クリムトらしいアイデアだ。

この部分について展覧会のカタログは、次のように書いていた。「幸福への憧れは詩にやすらぎを見出す。芸術は我々を理想の国に誘う。そこでのみ我々は純粋な喜び、幸福、愛を見出す。楽園の天使たちの合唱。喜びよ、美しき神々の火花よ。この接吻を全世界に」

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これは、合唱団の一部を拡大したもの。みな同じ姿勢をとり、目を閉じて恍惚の表情を呈している。口を開いているものや閉じているものが混在しているのは、どういう意味合いか。女性たちの衣装の幾何学的なパターンが印象深い。

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これは、歓喜のうちに抱き合う男女。こちらに背中を向けた裸の男が、裸の女の腕に抱かれている。カタログにある「この接吻を世界に」という言葉はシラーの手になるものだが、どうもこの絵からは、世界に投げかけられた接吻というイメージは伝わってこないようである。そのことから、さまざまな解釈を呼んできた。

(1902年 漆喰面にカゼイン塗料等 高さ220cm ウィーン 分離派館)






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