ブライトバート化するFOXニュース

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FOXニュースといえばもともと保守的なスタンスをとっていて、オバマ時代には政権に対して批判的だったが、トランプが政権をとるや、俄然トランプ寄りの姿勢を明確にしてきた。トランプの方では、CNNなど自分に批判的なメディアに対しては「フェイク・ニュース」と言って攻撃する一方、FOXニュースについては親和的な態度を示し、ニュースソースも優先的に提供しているといった具合で、蜜月状態が生じている。最近ではその蜜月状態が、腐れ縁のべったり関係にまで昇華し、とくにデジタル部門を中心に、トランプさまさまの報道を垂れ流している。そのさまが、あのブライトバートも顔負けだというので、FOXニュースのブライトバート化が方々で云々されるようになっているらしい。

FOXニュースのいわゆるブライトバート化は、半年前にノア・コッチがデジタル部門の責任者に就任して以来顕著になったと指摘されている。コッチ自身は、自分は事実を淡々と報道しているだけで、別にトランプを持ち上げようとは思っていないと言っているようだが、その発言はほかならぬFOXニュースの記事によって反駁されている。それほどFOXニュースのトランプ寄りの姿勢は誰の目にも明らかというわけだ。なにしろトランプを批判する者(セクハラの被害者たちを含め)は誰でも嘘つき呼ばわりし、ヒラリー・クリントンを口汚く罵っているありさまだ。なぜ今頃までヒラリーなのか。彼女以外にトランプにふさわしい大物の敵がいないという理由かららしい。

アメリカのメディアは、日本のメディアに比べて政治的な主張が明確で、そのこと自体は別に何ということもない。左翼的なメディアは自分が左翼的であることを隠さないし、右翼的なメディアは自分が右翼であることを隠さない。読者や視聴者はそれを織り込み済みで見ているから、あるメディアが政権べったりと言って非難するような大人気ないことはしない。ブライトバートが堂々と存在していられるのは、そうしたメディアをめぐる風土があるからだ。

ところが、そのメディアが、あたかも自分が公正な第三者であるかのごとく装って、偏向した記事を垂れ流すに至っては、やはり批判の余地はあるだろう。いまのFOXニュースがそれだと多くの人が感じている。テレビメディアは公的な電波を利用しており、その限りであまり偏向したニュースばかり流せないという事情があるが、それにしても公正を装って偏った記事を垂れ流すのは問題だとして、FOXニュースのブライトバート化を批判する意見が多いようだ。

翻って日本の場合には、新聞メディアの中には安倍政権に露骨にすりより、その歓心を得ようとして提灯記事ばかり載せているものもあるが、テレビメディアについては、いちおうポーズとしては公平性を装っている。もっともどこまでその公平性なるものを真に受けることができるかは別の問題ではあるが。






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