騒げば騒ぐほど笑いものになる:従軍慰安婦をめぐり「正論」を吐く人々

| コメント(0)
サンフランシスコ市が、中国、韓国、フィリピンの女性が日本軍の慰安婦にさせられたことを物語る像等を、市の財産として受け入れたことについて、サンフランシスコ市と姉妹都市関係の長い歴史を持つ日本の大阪市の何某市長が、両市の信頼関係が崩壊したと言って、姉妹関係都市を絶縁する決定を行った。この決定に至るまで、大阪市長は何度かサンフランシスコ側に対して、受け入れないように申し入れていたようだが、サンフランシスコ側はその申し入れにほとんど無視に近い扱いをしたようだ。

従軍慰安婦をめぐっては、大阪市長の前任者が、あれは必要なことだったと発言して、サンフランシスコ市議会から嘲笑されたという経緯があった。要するに大阪の市長は二代続けて従軍慰安婦をめぐる問題について正しい歴史認識をしていないと受け取られたようだ。だから今回の何某市長の行動は、自分のメンツをつぶされて怒っている餓鬼大将のように映ったらしい。ジャパン・タイムズでは、そんな何某市長を評して、騒げば騒ぐほど世界の笑いものになると社説に書いた。

一方、別の領域で従軍慰安婦についての日本側の主張を精力的に発信している動きもある。そうした人たちは、アメリカのジャーナリズムを舞台に、従軍慰安婦はボランタリーな売春婦だったのであり、そういうものならなにも日本に限らず、世界中の軍隊が活用していた。今現在だって、米軍兵士は精力的に売春婦を抱いていると言って、日本の兵士たちだけがスケベなわけではないと強調している。

そういう動きの一つとして、佐藤某氏なるものが、これもやはりジャパン・タイムズに寄稿した文章の中で、韓国の女性研究者パク・ユハ女史の研究を援用し、慰安婦の中には日本兵に愛され、また日本兵と深い恋愛関係に陥ったものもあったのであって、すべてが意に反した性交を迫られたわけではないと強調した。そう言うことで、従軍慰安婦には悪いことばかりでなく、いいこともあったのだと言いたいようだ。また、いわゆる女衒といわれる連中の多くは朝鮮人だったのであり、日本人だけが悪かったのではない、とも言い、この問題で日本ばかりせめられるのは片手落ちだと主張した。

パク・ユハ女史が、従軍慰安婦問題への朝鮮人のかかわりを指摘したのは、ホロコーストへのユダヤ人自身のかかわりを指摘したハンナ・アーレントの議論を想起させる。ハンナ・アーレントはホロコーストという地獄が、民族の問題に矮小化されるのを恐れ、人類全体の闇の部分として問題提起したわけだが、パク・ユハ女史にどのような意図があったのか、小生は知らない。しかし、朝鮮人のかかわりを指摘することで、日本人の責任を軽くしてやろうという気持ちはなかったのではないか。だが佐藤某氏にかかると、そんなことはどうでもよいということらしい。

従軍慰安婦をめぐる問題がこんなにもこじれてしまったのは、日本政府にも理由がある。日本政府がもう少し大人の対応をしていれば、もっと穏やかな経過をたどったのではないか。それを相手が気に入らないと言って大使や領事を召喚したり、韓国政府高官に会うたび声高に詰問するような姿をこれ見よがしに国民に披露しているものだから、日本国民のなかでも敏感な人々、つまり日ごろから「正論」を吐いているような人々をカッとした状態に焚きつけてしまう、ということなのだろう。

(参考)Sato column lacked proper perspective JT





コメントする

アーカイブ