日本橋に高速道路はいらない

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首都高速の都心部分の老朽化に伴い、関係機関の間で再整備の検討が進んでいるという。検討機関とは、国交省の道路部隊、東京都の土木部隊、首都高速道路の管理者である首都高速道路株式会社(旧首都高公団)の三者である。これに地元自治体の中央区が加わっているようだが、これは将来巨額に上る整備費用の一部でも負担させるための布石だと受け取られている。

都心部の首都高速道路は、1963年に整備されて以来50年以上も経過し、老朽化が進んでいるほか、東京オリンピックの話が持ち上がったりして、ここへきて再整備の検討が一気に進んだ。今の時点での検討方針を読むと、現状を前提としての地上部での再建と、地下化の二案に絞られている。解せないのは、完全撤去案が検討の俎上に上っていないことだ。

首都高速道路都心部の再整備を検討するにあたっては、都心部での高速道路需要を踏まえたうえで、完全撤去するという案も当然検討されてしかるべきだ。都心のどまんなかに高速道路が通っている都市は、上海などの中途半端な近代都市を除き、風格ある大都市にはない。ロンドン、パリ、ローマ、モスクワ、ニューヨーク、北京、どこをとっても都心に高速道路を見ることはない。そんな無様な構築物によって、都市景観が破壊されることに、都市や国家、そして市民が強い不快感を覚えているからだ。

日本でも、日本橋の上に高速道路の無様な構築物が覆いかぶさっている眺めに怒りを覚えている人は多い。だからこそ、地下化して景観に配慮しようというような議論も出てくるのだろう。しかし、検討の当事者たちが強調しているように、地下化には技術的、財政的な限界がある。その無理を通して地下化を進めれば、気の遠くなるような巨額の金が必要になる。

そこまでして、都心に高速道路を再建する必要はどこにもない。その必要性を感じているのは、上にあげた関係機関の連中だけだ。彼らは日本最大の土木マフィアと言ってよい。戦後の東京のアウトラインを決めて来たのは、この連中であって、彼らのおかげで東京のかつての情緒豊かな都市景観は台無しにされてきた。

繰り返して言うが、東京の都心に高速道路が絶対に必要だという理由はない。その大して必要もない高速道路を作るのに、国が傾くほどの巨額の金を使うのは、あまり明るくない未来が待っている日本にとって自殺行為のようなものだ。

この問題を、上にあげた土木マフィアに専管させていたら、どういうことになるか、結果は見えている。もっと広い視野に立って東京の高速道路のあり方を見直す機関を作るべきだ。





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