沈黙を破る人々:TIMEのPerson of the Year

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TIME恒例の Person of the Year に,今年はセクハラ被害について公然と発言した女性たちを、「沈黙を破る人々 The silence breakers」と命名したうえで選出した。今年は、こうした女性たちが声を上げたおかげで、ハーヴィー・ワインシュタインとかアル・フランケンといった各界の実力者が相次いで職を失い、セクハラはかならずしも得になる行為ではないという通念を、改めてアメリカ社会に喚起した。それは本来なら当たり前のことなのだが、その当たり前のことが今までのアメリカでは当たり前でなかった。正義は踏みにじられ、悪がはびこってきたのだ。そういう憂うべきアメリカを本来の姿に立ち戻すうえで、彼女らの行為には偉大な意義がある、というのが選出理由である。

沈黙を破る人たちの運動は、タラナ・バークが #ME TOO というハシュタグを通じて広めたことから、ME TOO 運動とも呼ばれている。彼女らは、自身のセクハラ被害を公の場で告白し、加害者=性犯罪者の氏名を明らかにしている。名指しされたものは大変な数に上り、その中にはドナルド・トランプやロイ・ムーアといった大物も含まれている。トランプは自分を名指ししたものたちを嘘つきと呼んでいるが、どちらが嘘をついているのか、多くのアメリカ人には明らかだ。

ところでそのトランプが、事前にツイッターを通じて、今年も自分が Person of the Year に選ばれることになっているという趣旨のことを発信した。TIME側では、これは全く事実無根だと否定している。実際には、トランプにとってもっとも不都合な連中が選ばれてしまって、トランプとしては怒り心頭のことと思う。

このエピソードはトランプの異常な自己愛を物語るものだが、最近はその自己愛のゆがんだ現われが世界に衝撃を与えた。エルサレムをイスラエルの首都と認定し、米大使館をエルサレムに移転する方針をぶち上げたのだ。これはイスラエル側に一方的な肩入れをすることで、中東和平へのアメリカの仲介意欲を放棄し、そのことによって大きな不安要因をもたらすものだ。それについてトランプは、自分がしたことの政治的な影響よりも、そのことで自分がどれだけ脚光を浴びるか、そのことにした関心がないように見える。

ところで、日本では、強姦されたと訴え出た女性が、たまたま強姦者が権力につながる人物だったということで、権力から捜査妨害を受けるという事件があった。この事件は刑事裁判としては成立しなかったが、女性は強姦犯に責任を取らせたい一心で民事裁判に訴えている。しかしそれについての世間の反応は冷たいもので、この女性は孤独な闘いを強いられている。日本ではまだまだ、強い者はセクハラやり放題という野蛮な状態が続いているわけだ。





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