トランプに北朝鮮先制攻撃をけしかけるアメリカ人たち

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韓国の主導で南北会談が催され、両国の融和ムードが演出される中で、アメリカのトランプ大統領はこれを歓迎するかのような反応を見せているが、アメリカ国内にはこの動きを苦々しく見ている者が多いようだ。彼らに共通しているのは、この融和によって北朝鮮への圧力に向けた国際的な包囲網が崩れ、その結果北朝鮮に核ミサイル開発への時間的な余裕を与えることで、アメリカの安全保障が著しく損なわれる恐れだ。彼らはこの恐れを理由にして、北朝鮮がアメリカを標的にした核ミサイルを完成させる前に、北を先制攻撃すべきだと主張している。ニューズウィークの日本版に寄せられたエドワード・ルトワック署名の記事などはその代表的なものだ。

<南北会談で油断するな「アメリカは手遅れになる前に北を空爆せよ」>と題したこの記事は、北が核ミサイルを完成させる前にアメリカは北の核関連施設を徹底的に破壊すべきだと主張している。従来アメリカがそれをためらってきたのは、そのことによって韓国とか日本と言った同盟国に深刻な被害が出るという想定に基づくものだが、その想定には根拠がない。いまのアメリカなら、瞬時にして北の核関連施設を破壊できるし、その際に北の反撃を許さないほどアメリカの能力は優れている。万が一、北の反撃が韓国に及ぶとしても、それはアメリカの責任ではなく韓国の自業自得というべきものだ。ソウルは国境からわずか30キロしか離れていないからこそ北朝鮮の格好の標的となっているのだから、わざわざ自分から攻撃してくれと言っているようなものだ。そのほか、核シェルターの建設とか、北の侵略に備えてやるべきことがたくさんあるのに、韓国はそれをさぼっている。つまり自分で自分を守ろうとする気概がないわけで、そんな国の面倒までアメリカが見てやるいわれはない。

アメリカとしては自国の安全が大事なのであり、アメリカの大統領ならそれを第一に考えるべきだ。アメリカが先制攻撃をしたら、周辺の同盟国、つまり韓国と日本とに甚大な被害が出るなどと、たいした根拠もないことにひきずられて決断を引き延ばしにすべきではない。引き延ばせば伸ばすほど、北朝鮮に時間的な猶予を与えることになる、その結果アメリカの安全がますます危機に瀕する。ここはひとつトランプには大決断をしてもらって、是非即刻北朝鮮に先制攻撃をしかけてもらいたい。その結果韓国がどうなろうとアメリカの知ったことではないではないか。そうこの記事は主張している。

この記事には日本のことは言及されていないが、文脈から読んで日本も韓国とほぼ同じようなレベルで考えられているのだと思う。要するにこの記事は、韓国や日本に気兼ねしてアメリカの安全を損なうようなことをせずに、アメリカだけの都合を考えて振る舞うべきだとトランプに勧めているわけだ。

いまのところトランプがその勧めに乗るかどうかはわからない。しかし先日行われた日米合同世論調査では、北朝鮮を攻撃すべきだとする意見が六割を超えていた。つまりアメリカ人の大分は、自国の安全を優先して北朝鮮を攻撃すべきだと考えているわけだ。世論が気になるポピュリストのトランプとしては、こうした世論に無関心ではいられないだろう。いつ北朝鮮への先制攻撃を決断しないともかぎらない。

翻って日本の安倍政権の対応ぶりをみるに、北朝鮮への武力行使を含む厳しい措置を考えているかに見えるし、またトランプに向かっても北朝鮮への武力行使をそそのかすような言動をしている。その際に彼らが、そのことによってどれほど日本に被害が出るのかきちんとした分析を行っているかと言えば、そのような気配は伝わってこない。戦争しろよと囃したてながら、戦争の結果については何らの予測もしていないようなのである。これを何といってよいのか。筆者には言うべき言葉が見つからない。






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