真実の腐蝕:トランプ政権のフェイクニュース賞

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トランプ政権が「フェイクニュース賞」なるものを発表した。一位は日ごろトランプを舌鋒鋭く批判している経済学者のポール・クルーグマンで、彼にコラムを提供しているニューヨークタイムズ始め、トランプに批判的な報道をしているメディアが顔をそろえた。「安定した天才」を自負する大統領からこのような賞をもらった人々はどのような気持ちだろうか。

トランプ政権が登場した直後は「ポスト真実」という言葉がささやかれた。それが今では「真実の腐蝕(Truth Decay)」という言葉に取って代わられつつある。「ポスト真実」という言葉には真実が軽視されることへの不安が込められていたが、いまやその真実は腐食しつつある、それを腐食させているのはトランプとその仲間たちだ、というニュアンスがこの言葉には込められているようだ。

この言葉を提起したのは中立系のシンクタンク、ランド・コーポレーションだ。ランドはアメリカ史を振り返りながら、過去にも真実が軽んじられ死滅したかに思われた時期はあったが、今日ほどひどかったことはなかったと結論付けている。この傾向が続けば、アメリカ人はもはや真実を重んじる姿勢を放棄してしまうだろう。そうした社会では、思い込みや推測が真実の代わりになり、人々は共通の土台にたって議論することがなくなるだろうと警告している。そうなっては、アメリカはむき出しの利害が競い合うだけの殺伐として社会になってしまうだろう、というのである。

トランプが自分に気に入らない意見や事実の報道をフェイクニュースと言って攻撃していることは、世界中の独裁者たちを喜ばせている。フィリピンのドゥテルテに代表されるようなそうした独裁者は、トランプの真似をして、自分の気に入らない報道をフェイクニュースと言って弾圧している。

日本の今の政権も、トランプに見習いたいようで、某官房長官などは、日本でも思い当たるフェイクニュースは多々あると言っている。できたらそういうメディアにフェイクニュース大賞を贈ってその信用を貶めたいかのようである。しかし日本では政府がそんなことをしなくとも、政府を応援してくれるメディアがしっかり控えているし、政府に批判的なディアを政府に代わって筆誅してくれる連中にもこと欠かない。





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