ブラザーフッド：朝鮮戦争を描く

この映画の隠れたテーマは兄弟愛だ。弟が町でいきなり徴兵されたことに対して、兄が自分が身代わりになることで弟を取り戻そうとする。しかし弟と自分の二人とも徴兵されてしまう。当時の韓国では一家に一人は男を残してやるという決まりになっていたらしいのだが、二人とも男手を取られたこの一家は窮乏に陥る。

一方兄弟はそろって同じ小隊に配属される。そこで兄は、自分が勲章をとったら、その褒美に弟を除隊させてやれると聞いて、英雄的な働きをして勲章を取る。そんな兄を見た弟は、むちゃなことをして死なないでくれと言う。しかし兄はますます英雄精神を発揮して戦う。その頃朝鮮戦争は勃発直後で、韓国軍は至る所で北朝鮮に敗退し、切羽詰まった状況に陥っていたのである。

だがアメリカが仁川に上陸して戦況が変わったり、今度は北に押し寄せた韓国軍が中国軍に粉砕されたり、戦局は一進一退をくりかえす。そんな中で兄の思いは、手柄をたてて弟を家族のもとに帰してやることだけだった。

しかしその家族がひどい目にあわされる。軍隊の移動中立ち寄った兄弟の目の前で、兄のフィアンセの女性がアカの嫌疑をかけられて韓国人民兵のような連中に殺されてしまうのだ。あまつさえ弟もその女性をかばったことをとがめられて営倉にぶちこまれてしまう。それのみか、上官の命令で営倉に火をつけられてしまう。弟が焼き殺されたと思った兄は、上官を石で殴り殺して、北朝鮮軍に投降し、そこで英雄的な戦果をあげる。

それを知った弟が兄を取り戻そうと北朝鮮軍に潜り込む。それに並行して南北間での激しい戦いが繰り広げられ、その最中に兄弟は顔を合わせることができたものの、兄の方は爆破されて死んでしまう。

こんな具合にこの映画は、弟思いの兄と、そんな兄の無謀な行為を気遣う弟との、深い兄弟愛が大きなテーマとなっている。兄の超人的な戦いぶりを中心にして、画面には激しい戦闘の様子が繰り広げられるが、それを見ていると、同じ民族同士で何故これほどまでに憎みあわねばならないのか、考えさせられるところがある。韓国側は北朝鮮をアカと呼び、アカを殺すのは当然のことだと言う。一方北朝鮮側は韓国を「韓国」と映画の中では呼んでいるが、当時の北朝鮮側は韓国をそのようには呼ばず「南朝鮮」あるいは単に「南」と呼んでいたはずだ。

同じ半島に生きる同じ民族が北と南に別れて互いに殺し合い、それが正義だと思い込んでいる。日本で言えば関東と関西がなにかの拍子で敵味方に分かれて殺しあうようなものだ。我々日本人はそれをありえないこと、バカげたことと思うところだが、韓国人はどうもそうではないらしい。何故そうなのか。我々日本人にはその理由が理解できないし、たとえ理解できたとしても馬鹿らしいと思うことに違いはないだろう。それ故この映画を見た日本人は、「朝鮮半島の人々はなんと愚かな人々だろうか」と思うに違いない。

韓国人自身は果たしてどう思っているのか。聞いてみたいところだ。