断頭台の下で:ロートレックのポスター

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「断頭台の下で(Au pied de L'echahaud)と題したこのポスターは、同名の書物の宣伝のために作られた。その書物を書いたのは、ロケット監獄の教誨師を長年つとめていたアベ・フォール。フォールは在任中に立ち会ったギロチンによる処刑の様子を回想録としてまとめ、それを雑誌「ル・マタン」に連載した。このポスターは、その連載記事を宣伝したものである。

中央部に、鎖で後ろ手を縛られた死刑囚が、刑吏に引き立てられて断頭台に向い、背後にはその様子を見守る兵士たちの群像がシルエット状に描かれている。刑吏と群像の間に立って、聖書のような書物を手にしているのが、教誨師のフォールだと思われる。

この断頭台(ギロチン)は、下木に死刑囚の首を固定し、そこに向って刃のついた上木を打ち下ろすことによって、死刑囚の首をはねるように工夫されている。映画でのギロチンのシーンには、うつむけに寝そべった死刑囚の上に首切り刃が落ちてくるように描かれているものもあるが、このポスターの場合には、死刑囚は立った状態で首をはねられるように見える。

「ル・マタン」はこのポスターを評して、恐ろしくリアルだと書いたそうだ。顔料には、黒、グレイ、アンバー、赤の四色を使い、しぶい色彩感を演出している。

(1893年 リトグラフ 86×72cm)






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