無子高齢化

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少子高齢化の傾向に警鐘を鳴らす意見が聞かれるようになって久しい。しかしこれからの日本が直面するのはそんな生易しいものではない。子どもがおらず、老人ばかりがやたらに多い「無子高齢化」社会がやってくるという意見も出て来た。雑誌世界の最新号(4月号)は、そんな意見を取り上げている。

前田正子女史は「未来の年表」という本に言及しながら、これからの日本が無子高齢化社会に突入するだろうという予想を立てている。彼女は2016年の合計特殊出産率1.44が今後も変わらないと仮定したうえで、人口の推移を分析している。最初の世代を男女合わせて200人と仮定すると、その子どもの世代では生まれる子どもの数は144人、孫の世代では104人となる。つまり人口の減少は加速度的に進むというわけである。その調子で進むと、遠からず生まれてくる子どもは劇的に減少する。子どもの殆どいない社会がやってくるかもしれない。

一方高齢化のほうも加速度的に進む。2024年には団塊の世代がすべて後期高齢者になるが、その年の人口1億2300万人のうち65歳以上の老人が占める比率は29.8パーセントである。また、2039年には団塊ジュニアが高齢者の仲間入りをするが、その年の日本の人口は1億1180万人で、そのうち高齢者の割合は34.9パーセントである。

こんな具合に高齢者の割合が増える一方で、子どもの数は劇的に減る。だから無子高齢化と言ってもよい現象が現れる確率が高いというわけである。

人口減少そのものは問題ではないという意見もある。実際ドイツは8000万人、イギリスとフランスは6400万人で、それなりにうまくいっている。しかしこれらの国は人口が少ないなりに、世代間の比率もそんなにひどいバランスではない。高齢化率は日本よりずっと低いし、子どもの割合は日本よりずっと高い。要するに人口構成にバランスがとれていれば、少ない人口でもなんとかうまく回転するが、子どもが殆どおらず、老人ばかりが多い社会では、さまざまなひずみが出て来る。

政府もやっとこの事態に危機感を持つようになり、少子化に歯止めをかける政策を本気で考えるようになってきたが、前田女史によれば、もう手遅れだということだ。多少出産率が上がっても、子を産む女性の数が絶対的に少なくては、生まれて来る子どもの数も増えない。日本では、団塊ジュニアが出産適齢期にそれなりの対策を打っていれば、少子化に歯止めがかかったかもしれない。しかし団塊ジュニアが年齢的に子どもを産めなくなった今頃になって、少子化対策に力を入れても無駄だというのである。

こんなことを聞かされると、ますます憂鬱になるばかりだ。誰が一体こんな日本にしたのか、と言いたくもなるというものだ。





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