アベネポティズム

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盤石な政権基盤の上に立って、無敵の荒野を行くが如き勢いだった安倍晋三総理に、一塊の暗雲が垂れ込めてきたようだ。その要因は、いわゆる「もりかけ問題」をめぐって新たな事態が起こり、安倍総理に対する国民の目が厳しくなったことだ。直近の各社の世論調査では、安倍政権の支持率は30パーセント台前半まで落ちた。

「もりかけ問題」は、一時は沈静化するように見えた。ところが財務省による公文書改ざんが明るみに出されると、安倍政権はその説明に追われ、その説明が一向に納得できない代物なので、国民の不信感は一層高まるという悪循環を繰り返して来た。

何故国民は安倍政権に不信感を持ったのか。それは縷々説明しないでも明らかだろう。安部総理の個人的な「お友達」といわれる連中が権力のおこぼれを貰って不当に肥え太ったりのさばっていることに、国民は政治の不正を嗅ぎ取っているのだ。

権力者が自分の気に入った連中に特別の便宜を図らうことをネポティズムと言う。ネポティズムはひと昔前まではどの国でも見られる現象だったが、いまどきは後進国以外では見られなくなった。というのも、ネポティズムは政治をゆがめる元凶として広く認識されるようになり、先進国の政治家の間では、割にあわないことだという受け止め方が広がっているからだ。
 
実際隣国の韓国では、前大統領がネポティズムを理由に刑事訴追されている。これなどはネポティズムが割にあわないことだということを誰にもわかりやすく示すものだ。アメリカのトランプ大統領も、ネポティズムに似た恣意的人事をやっているが、こちらは経済的な利益ではなく、政治的な影響力を材料にしたものであって、もともとメリットシステムの上に立つアメリカ政治では珍しいことではなかった。

ところが安倍政権の場合には、露骨な経済的利益誘導がネポティズムを介して行われていた。これは誰が見ても後進国型の古いタイプのネポティズムである。こんなとが先進国と言われる日本でいまだにはびこっているというので、世界中の注目を集めたほどだ。

スキャンダルの中心にいる安倍晋三総理は、外目には涼しい顔を決め込んでいるように見える。その顔を見ていると、この男には事態が正確につかめていないのか、それともつかめていながら知らぬ顔を決め込んでいるのか、判断がつかないところがある。もし事態を正確につかめていないのならば、それは政治家としての安倍総理の資質にかかわるだろう。またつかめていながら知らぬ顔を決め込んでいるなら、これほど国民を馬鹿にした話はない。

安倍晋三という特異な政治家の行うネポティズムだから、これをアベネポティズムと称したい。アベネポティズムはアベノミクスと並んで、アベポリティクスの中核概念と言えよう。

それにしてもアベネポティズムには非情なところもある。一時は安倍総理夫妻から高く評価され、彼らと親密に交際していたらしい連中が、一旦スキャンダルを引き起こし、夫妻にとって都合が悪い存在になると、有無を言わせず逮捕監禁してしまうのだから、ネポティズムとは言っても、友情でつながった間柄ではなく、利害打算だけの関係だということがわかる。





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