
ロートレックは、ジャンヌ・アヴリールをフィーチャーしたポスターを何枚か制作した。このポスターは最後のものだ。ほぼ二年半ぶりのポスター制作だった。このポスターをロートレックは、リトグラフの技術を応用しながら、石の代わりに鉛板を使った。三枚の鉛板に四色の顔料を使って製作したのである。
このポスターのなかのジャンヌは、彼女の実像をよくあらわしていると評判である。彼女は、細身で軽快で重量を感じさせない身体で、優雅に妖精のように、時には狂おしさをかんじさせるような踊り方をしたと言う。
衣装に施されている蛇のイメージは、当時はやっていたアール・ヌーヴォーにおなじみのデザインだ。その蛇がまるで生きているようにジャンヌにまとわりついている。
顔料は、黒、赤、黄色、ブルーの四色を用いている。なおこのポスターは、ロートレックのジャンヌへの好意のしるしとして作られ、実際にパリの街角を飾ることはなかった。
(1899年 ジンコグラフ 56×36㎝)
コメントする