座頭市物語:時代劇やくざ映画

| コメント(0)
yakuza21.zato11.JPG

座頭市物語シリーズは俳優勝新太郎の当たり役として大人気を博し、26本も作られた。寅さんシリーズをのぞけばもっとも多い。どの回も盲目の検校姿のやくざ座頭市が気ままな旅の途中土地のやくざのもとにわらじを脱いだことがきっかけで、やくざ同士の抗争に巻き込まれるところを描いている。座頭市は目こそ見えないものの、人の動きを掌にあるようにつかみ、当たるところ敵なしの強さを発揮する。その姿がかっこいいというので日本中の拍手喝さいを浴びたものだ。

第一回目は1962年に公開された。天保水滸伝の物語と絡ませている。天保水滸伝というのは、下総のやくざ飯岡の助五郎と笹川の繁蔵との抗争を描いたもので、幕末から昭和の初期にかけて講談や浪曲で庶民に親しまれた。侠客を自任するやくざの意地をテーマにしたもので、それに虚無的な剣士平手造酒を絡ませたりしたものである。

映画では座頭市が笹川一家にわらじをぬいだおかげで飯岡一家との抗争に巻き込まれ、折角仲がよくなったばかりの平手造酒(天知茂)と戦わざるを得ないという運命をテーマにしている。講談では笹川も飯岡も侠客ということになっているが、映画では両者ともえげつないやくざとして描かれ、そんなえげつないやくざ同士の抗争に巻き込まれる座頭市と平手造酒の不運に同情するような描き方になっている。

面白いのは座頭市が飲み屋の娘に惚れられることだ。この娘は父親と一緒に飲み屋をやっているのだが、飯岡一家のチンピラに惚れられている。しかもこれもチンピラの実の兄貴が妹を兄貴分のチンピラに世話しようとする。そこで妹はチンピラに強姦されそうになるのだが、そこを座頭市に助けられて、すっかり座頭市が好きになるというわけである。

そんなわけで、ただの喧嘩ばかりを描いているだけでなく、そこに男女のもつれあいや男同士の友情を絡ませたりしているおかげで、映画には陰影のようなものが生じてきて、そこが日本人の琴線に響いたというわけであろう。






コメントする

アーカイブ