バ・ビュタンの浜:スーラの点描画

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1886年の夏、スーラはセーヌ河口の港町オンフルールで過ごし、そこで七点の風景画を仕上げた。スーラは、冬はアトリエで大画面の絵に取り組み、夏は野外で比較的小規模なキャンバスに風景画をスケッチするという伝統的なスタイルを踏襲していたのである。

オンフルールといえば、港沿いに広がる町並みが美しいことで知られるが、スーラはもっぱら自然の風景のほうに関心を寄せた。風景画を、新しく習得した点描法を用いて描くこと、それがこの夏にスーラが自己に課したことがらだった。

「バ・ビュタンの浜」と題したこの絵は、オンフルール付近の海景を描いている。広々とした海と、その上に覆い被さる空、そして前面の浜と小高い岩山の組み合わせだ。構図は非常に単純で、海と前景の岩山との対比は、「オック岬」の構図に似ている。

ポイントはなんといっても、点描法だ。海面や右手前の草むらの様子が、無数の小さな色点の組み合わせによって表現されている。ただ全体としてあまり明るさは感じさせない。点描法を用いているにかかわらず、色の彩度が低いことが理由だと思われる。それには、暖色系の色が退色していることも働いていのかもしれない。

なお、海のように見えるのはセーヌ川の河口で、その向こうにかすかに見えるのはル・アーヴルの港であろう。

(1886年 カンバスに油彩 67.0×78.0cm トゥルネ美術館)







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