おしゃれ泥棒(How to Steal a Million):ウィリアム・ワイラー

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ウィリアム・ワイラーの1966年の映画「おしゃれ泥棒(How to Steal a Million)」は、一時期日本で流行った「ルパン三世」シリーズを思わせる、軽快な怪盗ものだ。「ルパン三世」より早く作られているから、その先駆者といってよい。尤も、両者の間に実際に影響関係があったかははっきりしない。

「ルパン三世」のようには人物は錯綜していない。ピーター・オトゥール演じる盗賊と、彼をサポートするオードリー・ヘップバーンが、力を合わせて、厳重な警戒網をかいくぐって宝物を盗み出すというストーリーになっている。ところがその宝物というのが食わせ物で、偽物の彫刻なのだ。その偽物を、それとわかっていながら、なぜ必死になって盗み取ろうとするのか。そこにこのコメディの要点がある。

オードリー・ヘップバーンの父親は腕の利く贋作家で、これまでに自分が作った贋作をオークション等で高値で売りさばいてきた。一方、この映画の小道具になっている小さな彫刻は、父親の先祖が作った贋作であるが、それをパリの美術館の要請に応じて貸し出すことになる。美術館では万が一の場合に備えて保険をかけようとするが、そうすると厳密な真偽判定が施されることになる。そうなってはこの彫刻が偽物だとばれてしまうし、父親の贋作のコレクションも素性が暴かれてしまう。そこで娘のヘップバーンが、ピーター・オトゥールに彫刻を盗み出してくれるように懇願する。そこからこの映画のテーマである、ルパン三世並みの窃盗劇が展開されるというわけである。

ピーター・オトゥールは、実は盗賊などではなく、美術品の鑑定家なのであった。彼は父親のコレクションに疑いをかけている美術商から、その真偽の判定を依頼されてその家に忍び込んだのだが、運悪く娘のヘップバーンに見つかってしまう。それだけならまだしも、ヘップバーンに一目惚れしてしまうのだ。その一目惚れの相手からあやうい仕事を依頼され、断り切れずに引き受ける。かくしてオトゥールは、贋作の実体を暴露するつもりだったのが、その逆に贋作の秘密を守る羽目になる。それも女に惚れた弱みのもたらすところというわけなのだ。

こんなわけで、ストーリーは至って単純で、それがコメディタッチで軽快に展開される。見ていて肩がこらない。ワイラーとしては珍しく、エンターテイメントに徹した作品と言えよう。






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