ポーズする女たち:スーラの点描画

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スーラは、1888年のアンデパンダン展に大画面の「ポーズする女たち」を出品したが、これは散々な悪評をこうむった。悪評の理由には二つあった。一つは、人物画に点描法を適用することの是非について。もう一つは、裸体の取り扱い方が猥褻だと言う非難だった。

まず、点描法そのものが、賛否こもごもだったし、仮にそれを認めるとしても、風景画のような静的な対象に限られるべきだし、人物のような動きのある対象にはふさわしくないという批判があった。これにたいしてスーラは、モデルたちから動きを排除し、あたかも静的な対象を描くかのような姿勢をもって答えた。

裸体が猥褻だと言う指摘は、裸体と並んで野外の風景が描かれていることに着目していた。この野外の風景は実物ではなく、先行する「グランド・ジャット島の日曜日」の画面を取り入れただけなのだが、それが、見る者にはあたかも窓越しに見られた実物の光景のようにうつり、その光景の中にいる実物の人物から裸体をのぞかれていることにモデルたちが無関心なのは理解できない、つまり猥褻だという非難が沸き起こったわけだ。この非難に対してスーラは沈黙をもって答えた。

この絵をざっと見ると、点描画らしさはあまり強く伝わってこない。よくみると微細な色点がびっしりと施されているのだが、遠目には普通の油彩画と異ならない。ただ全体としての印象は、点描画らしい彩度の高さを感じさせる。

三人のモデルは、それぞれ思い思いの姿勢をとり、互いに無関心を装っている。あたかも周囲には自分のほか誰もいないかのような振る舞い方だ。(1888年 カンバスに油彩 200×250㎝ アメリカ、バーンズ財団)

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これは、小画面のバリエーション。こちらは遠目にも点描画ということが伝わってくる。(1888年 カンバスに油彩 39.5×49.0㎝ 個人コレクション)







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