東京キッド:斎藤虎次郎の美空ひばりもの

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1950年の映画「東京キッド」は。喜劇映画の名人斎藤虎次郎が美空ひばりを主演にして作ったもの。当時ひばりは13歳だった。まだ女らしさは強まっておらず、あいかわらず中性的な魅力を振りまいている。実際この映画の中でひばりは、男の子に化けたり、女の子に戻ったりを繰り返している。

斎藤虎次郎と言えば、戦前からドタバタ喜劇の大家として名声が高かった。この映画でもドタバタ調子のコメディタッチが随所に盛り込まれていて、観客は笑いながらひばりの歌を楽しめるというわけだ。

ひばりを囲む俳優陣にも、一世を風靡した喜劇役者を揃えている。ひばりの実の父親を名乗るものには花菱あちゃこ、ひばりが住むアパートで子供相手に氷菓子の商売をする占い師に榎本健一(通称エノケン)、ひばりが好きな男の友人を名乗る堺駿二、そして坂本武といった具合だ。

筋書きはごく単純だ。母親が死んでみなしごとなったひばりを、ギター弾きの男(川田晴彦)がいやいや引き取るハメになる。そのひばりを実の父親が引き取ろうとするが、ひばりは母親と自分を捨てたその父親を許すことができない。そこで父親は力づくでひばりを奪うのだが、ひばりは父親の真心に触れて許す気になり、一緒にアメリカへ旅立つというものだ。

映画には色々な仕掛けが組み込まれていて、見ていて楽しいシーンの連続である。ひばりが姿をかくしても、ギター弾きがギターを弾くと、かならずギターに合わせて歌を歌いながら現われる。その歌として、前作の題名となった「悲しき口笛」と、この映画の題名になった「東京キッド」が盛り込まれる。「悲しき口笛」はひばりの出世作となったが、「東京キッド」は彼女の歌手としての名声を確立したと言われる。つまりひばりはわずか13歳で、大歌手として歩み出したわけである。

ひばりの歌に合わせてエノケンが踊るのだが、この踊りがまたなかなか面白い。エノケンの踊る姿を見ていると、天性のコメディアンというふうに思われてくる。コメディアンには言葉で人を笑わせるタイプと、身体演技で人を笑わせるタイプがあるが、エノケンは後者の代表格だ。彼の場合、その独特なだみ声で発する言葉のギャグも相当のものだ。

花菱あちゃこは、横山エンタツと組んで、一時は日本の喜劇界を席巻したものだ。売り物は、独特の関西弁なまりで発する口上、たとえば「むちゃくちゃでござりまするがな」といったもので、これが彼のトレードマークになっている。







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