サウンド・オブ・ミュージック(Sound of Music)

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1965年のミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック(Sound of Music)」は、アメリカン・ミュージカルの金字塔的な作品だ。理屈なしに楽しめる。何度見ても飽きないのは、気に入った歌を何度聞いてもあきないのと同じだ。この映画の中で歌われている歌(「ドレミの歌」とか「マイ・フェイヴァリット・シングズ」とか「エーデル・ヴァイス」など)は、おそらく永遠にわたって歌い継がれるだろう。

その割にはこの映画はシリアスなテーマを扱っている。ナチスに反逆したオーストリア人の勇気ある行動を描いているのだ。この映画には、The Story of the Trapp Family Singers と言う原作がある。原作を書いたのはマリア・フォン・トラップという夫人で、彼女は七人の子持ちである退役軍人と結婚した後、夫や子供たちとともにアメリカに亡命し、アメリカでファミリー合唱団を組織して大成功したことを、自伝風の回想録に書いた。映画はそのうち、一家がナチスを逃れてスイスに亡命するまでを取り上げている。

したがってこの映画は、原作の前半部分を取り上げているわけだが、それをまた映画では、マリアと子どもたちとの心暖かい交流を前半部で描き、後半部では、トランプと結婚したマリアが、子どもたちともどもオーストリアを脱出し、スイスに亡命するまでを描いている。

見どころは前半部におけるマリアと子どもたちとの交流だが、後半部でのトラップ大佐とナチスとのやりとりもなかなか見せる。ナチスに協力するオーストリア人に向かって、オーストリア人の誇りをぶつけ、ナチスに協力する意志がないことを、勇気をもって主張する。当時のオーストリアが、ナチス・ドイツによって併合され、ナチスとオーストリアとの一体化が声高に叫ばれていた中で、トラップ大佐のこのような主張は命がけだった。その主張を映画の中でさせるということは、この映画の政治的な性格を強く感じさせる。

普通、政治的な主張を盛り込んだ映画は、とかくつまらないものになりがちなのだが、この映画はその弊害には陥っていない。やはりマリアと子どもたちとの交流を中心に、人間同士の暖かい触れ合いが強調されているからだろう。

映画の舞台になったザルツブルグの街並と、アルプスの景色が美しい。ザルツブルグは言うまでもなく、モーツァルトの生誕地だ。というわけでもなかろうが、音楽がよく似合う雰囲気を感じさせる。映画の中でも教会の鐘の音が響き渡るが、その音がモーツァルトの音楽的感性を育んだのではないかと、感じさせられる。






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