カヴァナフのセックス・スキャンダル

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トランプが最高裁判事に指名したカヴァナフのセックス・スキャンダルが大騒ぎになっている。この問題には小生も大きな関心をもっていて、先日旅したロシアでも、友人たちの前にこの話題を持ちだしたところだ。その際、友人の一人はそんな話は聞きたくないと言ったものだが、小生としてはそう簡単に無視するわけにもいかない。

これは、彼がティーン・エイジャー時代に犯したセックス・スキャンダルを三人の女性が相次いで暴露したというもので、一人目の女性は彼によって強姦されそうになったと訴え、二人目の女性は、彼がズボンからペニスをずりだして彼女の顔になすりつけたといい、三人目の女性は、彼が彼女の飲み物に睡眠剤を混ぜ、友人らとともに眠った彼女を輪姦しようとしたと言っている。事実だとしたらゆゆしきもので、こんな行為をする人間は、たとえそれがテーィン・エイジャー時代のことであっても、最高裁判事としては失格というべきである。

にもかかわらず、指名したトランプは強気で、女性たちの言い分はいずれもうそっぱちで、民主党の汚い政略に乗せられていると、例によって物事をぐちゃぐちゃにして、事態の本質を曖昧にする戦法をとっている。

カヴァナフの最高裁判事としての資質は、これらセックス・スキャンダルだけからしても不適格というべきだが、彼にはそれ以上に、最高裁判事としての資質を疑わせる点がある。彼はブッシュ時代に政権のご意見番をつとめたが、悪名高いグアンタナモの拷問を容認する姿勢をとったし、そのほかにもNSAによる個人情報へのアクセスは憲法違反ではないと、基本的人権を軽視する立場を取って来た。もっとも問題なのは、大統領権限の無制約性を主張するユニタリー・エクゼキュティヴ論を信奉していることで、アメリカ政治伝統の三権分立を軽視していることだ。トランプがカヴァナフに入れ込んでいるのは、この部分だと言われるが、こんな人物が最高裁判事になることは、アメリカにとって災厄以来の何物でもない。

実際彼が最高裁判事になったら、マイノリティの人権は軽視され、政府の権限が拡大され、アメリカはディストピアをめざすことになりかねない。そういう懸念から、セックス・スキャンダルを追求するのもよいが、彼の政治的偏向のほうにもっと力点を置いて批判すべきだという意見も強い。

しかし政治的偏向を理由に批判することは、泥仕合になる可能性が強い。鉄面皮のトランプに、民主党による陰謀だという口実を与えかねない。そこで筆者などは、セックス・スキャンダルに絞って批判したほうが有効ではないかと思うのだが、アメリカの政治的な土壌の上では、それは甘いということなのだろうか。





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