シモン・ウシャコフの聖顔:ロシア正教のイコン

| コメント(0)
1660.jpg

17世紀には、従来のイコンの概念を破って、リアルな画風のイコンが作られた。モスクワのクレムリン内にアトリエをもっていた職業画家たちが、美術品としての絵画を描くかたわら、イコンを制作し、そのイコンをリアルな絵のように表現したのである。かれらは、リアルな絵のほうが本物に近いのであるから、イコンとしての効用も優れていると理屈をつけて、リアルな画風のイコンを制作した。

その代表がシモン・ウシャコフである。かれは西洋画の強い影響を受けたうえに、西洋の教会絵画がリアルな画風であることを踏まえて、リアルなイコンを制作した。

この聖顔のイコンはその代表作の一つである。一見してリアルな画風が、従来の伝統的なイコンとは強い対象をなしている。立体感をあらわすために陰影をつけたり、髪や皮膚の色を現実に近づけようとしている。

しかしこうした作風は教会の強い反発を招き、また庶民の支持も得られなかったので、一時的な流行にとどまった。






コメントする

アーカイブ