大統領の陰謀:ウォーターゲート事件に迫る

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1976年のアメリカ映画「大統領の陰謀(All the President's Men)」は、ウオーターゲート事件をテーマにした作品。これは民主党の内部情報を、ニクソン大統領のスタッフが違法に盗聴した事件だ。1972年の6月に事件が発覚し、1974年の8月にニクソンが辞任するまで、アメリカを揺るがした。この不名誉な事件は「大統領の犯罪」として記憶されることになった。大統領のニクソンとしては、非常に不名誉な結果になったわけだ。ニクソン自身は決して無能な大統領ではなく、ベトナム戦争の中止、金兌換制度の廃止、中国との関係正常化など、歴史に残るような業績をあげているのだが、この事件のイメージがあまりにも悪いので、悪人にされてしまった。

映画は、ニクソンそのものではなく、そのニクソンの起こした事件の真相を追求するワシントン・ポストの二人の記者の活動ぶりに焦点を当てている。ロバート・レッドフォード演じるボブ・ウッドワードとダスティン・ホフマン演じるカール・バーンスタインが、盗聴にまつわる情報を集めることで、事件の真相に迫ろうとする過程を描いている。その情報を彼らはニクソンの選挙対策スタッフから得ようとするのだが、その際にある謎の人物が指南役を努める。その人物をかれらはディープ・スロートと呼んでいる。ディープ・スロートという言葉は、いまでは卑猥なイメージが付きまとってるが、この事件が起きた頃には、なかなか声を発しないというような意味合いで使われていたようだ(なお、この人物はのちに、FBI副長官マーク・フェルトだったと判明する)。

映画はあくまでも、ワシントン・ポストの記者たちの奮闘を追うことがテーマなので、事件そのものについてのこだわりはあまり感じさせない。その証拠にこの映画は、事件の結末についてほとんど関心を示していないのである。ニクソンという悪党に、そんなにこだわってはいられないと言いたいようである。

ともあれこの映画は、ニクソン自身が巻き起こした旋風が収まっていないときに公開されたので、アメリカでは大変な反響を巻き起こしたようだ。ニクソンはもともと悪党のイメージを持たれていたが、この映画がそのイメージを強化したことは間違いないようだ。





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