水浴のディアナ:ブーシェのロココ世界

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「水浴のディアナ(Diane sortant du bain)」と題されたこの作品は、「ヴィーナスの勝利」と並んで、ブーシェの最高傑作というべきもの。1742年のサロンに出展され、その際には「女従者とともに水浴を終えるディアナ」と題されていた。その後、簡略化され、「水浴を終えるディアナ」となった。日本では「水浴のディアナ」と呼ばれる。

単に「水浴のディアナ」というと、水浴しているシーンが思い浮かび、この絵はそのイメージとは違うのではないと思われるのだが、それは題名の変遷に従い、もともとの意味が希釈された結果なわけである。

全裸のディアナが岩の上に腰掛け、左足を右足に軽く乗せている。その突き出された左足の先端を、従者の女が見つめている。それが何を意味しているのか、画面だけからはわからない。しかし、絵のモチーフが、二人の女性の心理的なやりとりにあることがうかがわれる。だが、今日では、簡略な題名のためもあって、観客の目はディアナに集中し、従者の女にむけられることはない。

ともあれブーシェは、神話の内容そのものに拘ったわけだはなく、あくまでも女性の肉体の優雅さを表現したかっただけなのだと思う。

(1742年 カンバスに油彩 57×73㎝ パリ、ルーヴル美術館)





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