ジャック・ドゥミ「ロバと王女」:ペローの童話「ロバの皮」

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ジャック・ドゥミの1970年の映画「ロバと王女(Peau d'Âne)」は、シャルル・ペローの童話「ロバの皮」をミュージカル風に仕立てた作品。ペローは、古いおとぎ話「灰かぶり姫(別名シンデレラ)」をもとに、父娘の近親婚とか金の糞をひりだすロバの話を組み合わせた。この映画はそれをミュージカルに仕立てることで、実に楽しい雰囲気を醸し出している。文句なしに楽しめる映画だ。

ただし、謹厳な道徳家には気に入らないかもしれない。というのもこの映画は、父親から結婚を迫られて悩む娘を主人公にしているからだ。娘に結婚を迫るというのは、いくら国王といえども人倫上許されない行為だ。国王は妃を失って孤独に悩むのだが、だからといって実の娘を妃の後釜に据えようとは、犬畜生にも劣ることである。

悩む娘にリラの要請が知恵をつけ、なんとか父親の意思をかわしたあげく、娘は隣国の村に避難し、そこでロバの皮を頭からかぶって正体を偽る。そんな娘を村人は汚らしいといって迫害する。だがたまたま村を通りがかったその国の王子から見そめられ、ついにはめでたく結婚するといった内容である。

なぜロバの皮がでてくるのか、そこはよくわからない。だが童話というものは、理屈に拘っては面白みを損なう。筋を素直に受け入れて、楽しむほうが悧巧というものである。また、灰被り姫の靴のかわりに、この映画ではパンの中に隠されていた指輪が、恋のとりなし役を務めている。

なお、王さまはリラの妖精に乗り変えて、娘と結婚することはやめる。リラの妖精は、自分が犠牲にならねばこの父娘を不道徳な行為から救い出せないと思ったのであろう。娘を演じたカトリーヌ・ドヌーヴは、この年27歳になっていたが、二十歳くらいのみずみずしさを感じさせる。王さまはジャン・マレーが演じている。






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