パリ20区、僕たちのクラス:フランスの教育現場を描く

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ローラン・カンテの2008年の映画「パリ20区、僕たちのクラス(Entre les murs)」は、フランスの中等教育の現場を描いた作品。公立中学校のクラス運営を巡って、教師が生徒との間で奮闘する様子が描かれている。クラスは規律に欠け、生徒は勝手なことばかりする。それに対して教師が立ち向かい、クラスの秩序を保って、生徒の学習を励まそうとするが、なかなか思うようにならない。教育とはいいながら、実情は教師と生徒との戦いである。ふつうの日本人からみれば、学級崩壊の特異な例ということになるのだろうが、フランスでは珍しいことではないらしい。

クラスがなかなかなり立たない理由は、生徒がさまざまな国からやってきていて、フランスに対して帰属意識が弱いことと、共通する価値感のようなものを持てないからだ、というふうに伝わってくる。生徒達は、親などから受けついた出身国の価値観に基いて行動する。それをフランス人の教師が批判すると、なぜ批判されるのか、その理由がわからない。つまり、非常にまずい状況があるわけだ。

そうした状況に置かれた教師は、半ばは仕事熱心さから、半ばはうまく行かないイライラ感から、生徒たちと無用の対立に陥ったりする。その挙句に、ちょっとした言葉尻をとらえられて、生徒たちの猛反発をかい、教師と生徒との正常な関係をもてなくなる。教師は一方的な敗北感をいだくのだ。

そういうわけで、救いのない映画である。その救いのなさは、移民労働力で成り立っているフランス社会の闇の部分を引きずっているからだというふうに思わせる。このような事態がフランスの普通の姿だとすれば、フランスはかなり深刻に病んだ社会だといわねばなるまい。なお、この映画のもつ暗さを反面教師にして、フランスの中等教育のいいところに光を当てた映画「十二か月の未来図」が、2017年に作られた。






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