犬童一心「眉山」:母娘の絆

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犬童一心の2007年の映画「眉山」は、母娘の絆を描いた作品。原作のさだまさしがウェットを売りものにする人間だから、これもウェットな作品に仕上がっている。ウェットすぎてしらけるほどである。

舞台は徳島。娘は東京で旅行代理店に務めているが、母親の具合が悪いと聞かされて、郷里の徳島に戻る。母親は末期がんで、余命いくばくもないと医師から告げられた娘は、母と過ごす最後の日々を大事にしたいと考える、といった内容で、いかにもホームドラマ向けの筋書きだ。

ひねりは、母親に自分を産ませた父親が生きていて、娘がその父親に会いに行くことだ。父親は、娘と分かっていて何も言わなかったが、それは看護婦をやっている人のいい妻に遠慮しているからだ。そんな男でも、娘は母親が生きている間に再会させたい。その願いはなかばかなえられて、阿波踊りの会場で母親は昔の恋人を遠目に見ることができたのである。

このかなりルースなストーリーに、娘と病院の若手医師との恋がからまる。また、母親が生前献体の意思を表明しており、死後二年間解剖を受けたというメッセージもある。解剖の検体に回されると、二年あるいは三年間、家に戻ってこられないそうだ。

こんな具合で、映画としての迫力はいまひとつだが、娘を演じた松嶋菜々子の演技が自然なので、彼女には好感がもてる。母親は宮本信子が演じていたが、彼女が演じると、時代がかって見えるのは、いたし方がないのであろう。

なお、タイトルにある眉山とは、徳島市の西にある小高い丘で、徳島市街を眼下に一望できる。映画でも、その様子が映し出されている。






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