若い婦人の肖像:ドガの肖像画

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「若い婦人の肖像(Portrait de jeune femme)」と呼ばれるこの絵は、ドガの最も有名な作品の一つであり、かつ、近代美術史上婦人肖像画の最高傑作の一つとされる。ドガは若いころには、自画像を含めて数多くの肖像画を手がけた。生活に困っているわけではなかったので、金のために肖像画を描くということはせず、主として家族を喜ばせるために描いた。父親の威厳のある姿を描いたり、弟ルネの妻エステルの肖像をかわいらしく描いたものだった。

この肖像画のモデルについては、さまざまな推測がなされて来たが、特定することはできていない。ドガは、女に対して軽蔑の感情を抱いていたとされ、女性を理想化して描くということは考えられないのであるが、この絵には、理想化された女性像を見ることができる。

これを描いたとき、ドガはまだ33歳になったばかりであり、後年顕著になった女性蔑視の態度は表面化していなかったのかもしれない。女性の表情は気品を感じさせ、また引き締まった口元は意志の堅固さを感じさせる。一方、ふくらみのある髪型は、ある種の優雅さをたたえている。

ドガは、アングルの古典主義的な技法を非常に気に入っていて、静的なイメージを明確な輪郭で表現することを好んだ。この絵には、アングル的な古典主義の傾向を認めることができる。

(1867年 カンバスに油彩 27×22㎝ パリ、オルセー美術館)





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