TATTOO<刺青>あり:高橋伴明の映画

| コメント(0)
japan403.tattoo1.jpeg

高橋伴明の1982年の映画「TATTOO<刺青>あり」は、1979年に起きた銀行強盗事件に取材した作品。それ以前の高橋はポルノ映画を作っていたのだが、普通の映画を作るにあたって、最初に選んだテーマが、銀行強盗に失敗して死んだあるならず者の青春だったわけである。そのならず者は、本物のやくざにはならなかったが、胸に彫った刺青を見せびらかして他人を脅迫し、それで世の中を渡るというケチな人間だった。そんな人間になぜ高橋が興味を覚えたか。それはわからない。

映画は主人公の血まみれな遺体を映すことから始まる。そこから過去へと懐古的にさかのぼるのだが、死んだときの彼は30歳であって、そこから15歳の時点までさかのぼるのだ。かれはその年に押し入り強盗を働き、そのことで社会から脱落する。脱落したかれは、少しでも有利に生きようと思い、胸に刺青を施すのだ。この刺青を人に見せびらかし、それで怖がらせて、脅迫行為を有利に運ぼうというのである。

30歳で死ぬまで、いろいろな体験をする。もっとも大きな意味を持ったのは、関根恵子演じる若い女との関係だ。この女は後に、他の男の情婦になるのだが、その男というのが、山口組の組長襲撃事件の犯人なのである。関根がかかわった男は二人とも異常な死にかたをする。だから関根は、自分は男をダメにする女だと自嘲する。

主人公が銀行強盗をするつもりになったことに、大したわけはない。30歳を節目に、ひとつ大儲けして、以後の人生の資金にしたいという軽い考えからである。銀行に押し入り、人質をとってたてこもったはいいが、簡単に射殺されてしまう。思慮の足りない発作的な行為といってよい。

要するに阿呆なならず者なのである。そのくせ、妙なことでかいがいしさを発揮したりする。とくに母親に対してはかいがいしく振る舞う。女に対しても、機嫌のいい時はやさしく振る舞う。だが、根が粗野にできているから、だれからも信頼されない。最後は一人で銀行に押し入り、簡単に射殺されてしまうのである。

主人公を宇崎竜童が演じ、その母親を渡辺美佐子が演じている。関根恵子はこのとき二十代の後半だったが、表情に似合わず豊満な肉体を披露している。彼女の表情は、エロチックな雰囲気とは無縁に見えるのだが、豊かに盛り上がった尻などは、かなり挑発的である。





コメントする

アーカイブ