レールモントフ「詩人の死」プーシキンの死を悼む

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レールモントフは、プーシキンを深く敬愛していた。かれにとってプーシキンは、文学の手本であるとともに、生き方を導いてくれる人でもあった。デカブリストが弾圧されて、ロシア社会が閉塞的な状態に陥った時にも、プーシキンは未来への希望を捨てなかった。レールモントフにとっては、プーシキンはトータルな模範だったのである。

そのプーシキンが決闘で死んだのは1837年の1月29日である。そのことを知ったレールモントフは深い悲しみに陥り、その悲しみを一編の詩に託した。「詩人の死」と題する詩である。この詩は、プーシキンの死の二日後に書かれた。その際には、56行からなっていた。その後、二月の半ば過ぎに16行を足して、現在のような形に整えた。原稿は手書きで筆写されて多くの若者たちに読まれた。どういうわけか、それがツァーリの目にとまった。ツァーリは、それにロシアの体制への挑戦を感じ取り、レールモントフの逮捕を命じた。

そんなわけでこの「詩人の死」は、プーシキンの死を悼むという体裁を通じて、プーシキンを死に追いやったロシア社会全体を痛烈に批判する内容になっている。この詩を書いたとき、レールモントフはまだ22歳の若さだったが、これによってかれの詩人としての名声が確立したといわれる。以後26歳で死ぬまで、レールモントフはプーシキン流の悲憤慷慨の詩を書き続ける一方、畢生の小説「現代の英雄」を執筆するのである。実に短い生涯であり、レールモントフ自身は、生きることにほろ苦さを感じただろうと思われるが、ロシア文学にとっては、レールモントフを持ったことは幸運だった。

ここではその「詩人の死」のうちから、最初の20行と、最後の16行を、拙訳によって紹介する。あわせて当該部分のロシア語原文を掲載する。

詩人の死

詩人は死んだ! 名誉にとらわれ
誹謗中傷に倒されたのだ
胸に鉛をくらい 復讐に渇き
誇らかな頭を垂れながら!
詩人の心は くだらぬ侮辱にも
耐えられなかったのだ
かれは社会に歯向かった
いつものとおりたった一人で そして殺された!
殺されたのだ! いまさら泣いたとて何になろう
空虚な賞賛、無益なコーラス
そして悲哀あふれるささやきも何になろう?
運命が宣告を下したのだ!
かれの自由で勇ましい才能を
拒絶したのはお前ではないのか
そしてこの消えゆく炎を弄んだのは
お前ではないのか?
もういい 勝手に楽しむがよい
詩人はそんな拷問に耐えはしない
才能の偉大な光は消え
勝利の花束はしぼむ
_____ 
お前たち 邪悪な父親たちの
傲慢な子孫よ
運命のゲームに不満な種族のがらくたを
いやしいかかとで踏みしだくものよ!
王冠に群がる貪欲なやからよ
自由の殺害者 天才と栄光よ!
お前たちは 法という天蓋の下に身をひそめる
押し黙って 真実と正義のかげに
しかし正義は神から来るのだ 腐敗の友人たちよ!
正義は仮借なくお前たちを待ち受ける
そして強硬なあまり金の触れ合うような音をたてる
正義はお前の未来の行いを知っている
お前がうそをついても無駄だ
もはや何の役に立たぬ
お前の黒い血でもって
  詩人の聖なる血を洗い流すことはできぬ 

Смерть поэта

Погиб поэт! - невольник чести- 
Пал, оклеветанный молвой, 
С свинцом в груди и жаждой мести, 
Поникнув гордой головой!.. 
Не вынесла душа поэта 
Позора мелочных обид, 
Восстал он против мнений света 
Один, как прежде... и убит! 
Убит!.. к чему теперь рыданья, 
Пустых похвал ненужный хор 
И жалкий лепет оправданья? 
Судьбы свершился приговор! 
Не вы ль сперва так злобно гнали 
Его свободный, смелый дар 
И для потехи раздували 
Чуть затаившийся пожар? 
Что ж? веселитесь... - он мучений 
Последних вынести не мог: 
Угас, как светоч, дивный гений, 
Увял торжественный венок. 
_____ 
А вы, надменные потомки 
Известной подлостью прославленных отцов, 
Пятою рабскою поправшие обломки 
Игрою счастия обиженных родов! 
Вы, жадною толпой стоящие у трона, 
Свободы, Гения и Славы палачи! 
           Таитесь вы под сению закона, 
           Пред вами суд и правда - всё молчи! 
Но есть и божий суд, наперсники разврата! 
           Есть грозный суд: он ждет; 
           Он не доступен звону злата, 
И мысли, и дела он знает наперед. 
Тогда напрасно вы прибегнете к злословью: 
           Оно вам не поможет вновь, 
И вы не смоете всей вашей черной кровью 
           Поэта праведную кровь! 







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