バイデンの対中半導体戦争に勝ち目はあるか

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対中人種戦争を仕掛けたバイデンだが、目下ウクライナを舞台にした対ロ代理戦争に手がいっぱいなようで、対中関係はいまのところエスカレートまではいたっていない。だが全く静観しているわけでもなく、半導体をめぐる対中攻撃にとりかかった。中国の半導体産業を弱体化させるために、半導体の生産に必要な製品を輸出禁止しようというもので、それに日本とオランダがまきこまれた。バイデンは、世界の半導体製造装置の大半を生産しているアメリカ・オランダ・日本の企業に対して、中国への製品輸出をやめるよう求めたのだ。オランダの企業ASMLは、そんなことをしても無駄だといって抵抗するそぶりを見せたが、オランダ政府の圧力で受け入れざるを得なかったようだ。日本の企業東京エレクトロンは、日本政府の言いなりになるようである。

バイデンが対中半導体戦争というべきものを仕掛けたのは、中国による台湾への武力侵攻が近いと考えているからだろう。アメリカでは、中国は習近平の三期目の任期中に台湾攻勢を強めるだろうと予想するむきが有力であり、おそくとも2027年までには、いわゆる台湾有事が発生する可能性が高いという脅迫観念が権力者たちを捉えているようだ。そこで台湾有事までに、中国が軍事力を高めることを妨害するために、軍事力にとって大きな意義をもつ半導体産業を弱体化させようということらしい。

確かに半導体は軍事技術の向上にとって決定的な役割を果たすので、中国の半導体産業を弱体化させれば、中国の軍事技術の高度化も阻止できる、と考えることには一定の合理性はある。とはいっても、いつまでも中国の半導体産業を封じ込めておくことは不可能だから、いつかは中国自身の努力で半導体産業の高度化に成功するであろう。だが、その成功を遅らせることはできるわけで、中国がまだ十分な備えが出来ていない時点で、アメリカとその同盟国(つまり日本)が中国を軍事的に圧倒することは不可能ではない。

それにしても、そうしたバイデンの思惑に、日本はいいなりに従っていてよいのか、という問題は残る。バイデンの対中半導体戦争に加担することは、半導体の分野で巨大な市場を失うことだ。それによって日本の半導体産業がどのような影響を受けるのか、それは明らかではない。おそらくいい影響はないだろう。日本はかつて、半導体の分野で世界をリードしていた。それが今日の惨憺たる状況になったことにはいろいろな要因があったのであろうが、その一つとして、尖閣をめぐる対立がもとで、半導体の材料であるレアアースなどが、中国から輸入できなくなったことも影響したと考えられる。つまり日本の半導体産業は、これまでも政治に翻弄されてきたわけで、それと同じような事態に、再び直面しないともかぎらないのである。





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