山本薩夫の映画「暴力の街」:権力と暴力

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山本薩夫の1950年の映画「暴力の街」は、戦後の混乱期における暴力組織の暗躍にメスを入れた作品。暴力団と結んだ町の有力者が警察や検察と手を組んで町の政治を牛耳る。それに対して正義漢のある新聞記者が立ち向かい、その心意気に様々な人々が応えて、腐敗した町の政治を刷新するといった内容である。

新聞記者が庶民とともに町の腐敗を一掃するために活躍するといった話は、今日ではおとぎ話めいて聞こえるが、これは実際にあったことを映画化したというから、戦後間もない頃の日本には、このような事態が生じたのでもあろう。

警察や検察が暴力組織と結託して庶民を抑圧するさまを描いたということで、当時は大反響を呼び、国会でも議論の対象になったそうだ。権力側は露骨な反感を示したらしいが、この映画の制作関係者が弾圧されることはなかったようである。

ともあれこの映画は、反権力を制作理念とする山本薩夫にとって、原点のような作品となった。以後彼は、日本の権力(政治権力のみならず社会関係における権力現象を含めて)を厳しく批判する映画を作り続けるのである。





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