山本薩夫「戦争と人間第二部愛と悲しみの山河」

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山本薩夫の1971年の映画「戦争と人間第二部愛と悲しみの山河」は、「戦争と人間」シリーズの第二作。昭和32年3月の満州国建国から同37年7月の盧溝橋事件までを描いている。日本の侵略拡大に寄り添うそうように伍代財閥も中国への進出を進め、軍事資金の獲得を名義にアヘン売買にも手を染める。満州国の特務機関員となった柘植(高橋英樹 伍代の長女の恋人)が、伍代のアヘン密売を摘発したりするが、時代は超法規的なことがまかりとおる世界、伍代は堂々と違法行為に手を染める。

それに並行して、伍代の二女(吉永小百合)と耕平(山本圭)の恋、伍代の次男(北王子欣也)と狩野温子(佐久間良子)の恋、日本人学者服部(加藤豪)と中国人富豪の娘(栗原小巻)の恋などが絡む。軍部については石原莞爾の活躍に焦点があてられる。また、この第二部では、中国共産党の存在感が増し、その共産党軍が満州軍を悩ます場面が出てくる。満州軍は、黄色い旗によって可視化されている。彼らと闘うのは、共産軍のほかに朝鮮の独立運動家らもいる。また、蒋介石の軍隊も、抗日に加わるようになる。日本は中国全体を相手に無謀な戦いに突き進んでいくのである。

日本国内では、反戦を疑われた人々が官憲に弾圧される。山本圭演じる耕平も、特攻の拷問の餌食になる。この連中は、気に入らぬものを痛めつけるのを趣味とするサディストとして描かれている。日本人が日本人をいためつけるのであるから、中国人に対しては、もっとひどいことを平気でする。その中国人を、日本人は「ちゃんころ」と呼んでさげすむ。「ちゃんころ」というのは、一時代の日本ではやった中国人への蔑称である。

石井細菌部隊を思わせる、中国人への人体実験も描かれる。日本人は中国人をモルモットのようにあつかい、面白がって殺すのだ。なにしろ先の日中戦争で日本が殺した中国人の数は一千万人以上ともいわれているので、中国人はまともな人間としてではなく、殺して差支えのない動物として処理されていたのである。

こういう映画が作られて、しかも大きな反響を呼んだということは、時代の雰囲気のせいであろう。いまどきこんな映画を作ったら、轟々たる非難の声がわきおこり、とてもまともには上映できないのではないか。時代が進むとともに、社会の雰囲気が変わったということだろう。






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