1880年代のドガは、多くの風俗画と並んで、女性の裸体画を数多く描いた。なかでも、浴槽の中の女シリーズが有名だ。これはその中でもっともよく知られた作品。浴槽の中でしゃがみ込み、髪の手入れをしている女を描いている。
女の後姿を斜め上から見下ろしている構図で、女の表情は見えないし、また、親密な雰囲気も感じられない。そんなことから、ドガは女性をあたかももののようにあつかっているという批判も出た。
一方、ドガ一流のエロティシズムを指摘する見方もある。そのエロティシズムはしかし、健全なものではなく、のぞき見的ないやらしさを感じさせるものだ。この絵にも、そうしたのぞき見趣味的なものは否定できない。(1886年 紙にパステル 60×83㎝ パリ、オルセー美術館)
これも浴槽の女シリーズの一枚。こちらは、浴槽の中に立って、なにやら底のほうを磨いている風情である。人の眼を気にしていないことは、上の絵と同様である。(1886年 紙にパステル 70×70㎝)
コメントする