国連安保理がイスラエルの無法行為に待ったをかけられたワケ

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国連安保理が、イスラエルによるパレスチナ占領地への入植拡大を批判する決議をした。イスラエルはこれに異議を唱え、アメリカがそれに同調したことを非難したと伝えられる。だが実際には、そんなに単純なものではないようだ。これについては、イスラエルも一定の理解を示し、それをアメリカが確認したので、安心して同調したということらしい。アメリカとしては、イスラエルとの緊密な関係を踏まえ、イスラエルが強く反発する決議案には今まで拒否権を行使してきており、今回も、もしイスラエルが強く反発するなら、拒否権を行使するはずだった。それが、しなかったのは、国際的な背景が働いているためだ。

いま、アメリカをはじめ西側諸国は、ウクライナ戦争をめぐって、ウクライナに肩入れしてロシアを非難している。非難の理由としては、ロシアが国際法に違反し、戦争犯罪をしているということがあげられているが、同じ事情は、パレスチナ人に対するイスラエルの行為にもあてはまる。もしロシアを国際法違反で非難するなら、イスラエルについても、同じ規範を当てはめて非難すべきだということになる。ロシアの蛮行については非難して、イスラエルの無法行為を見逃すのでは、ダブル・スタンダードの批判を免れない。そんな懸念が働いて、今回はアメリカもイスラエル非難に賛同せざるをえなかった、というのが真相のようである。

今回決議案が出されたことのきっかけは、安保理の議長国であるアラブ首長国連邦が、イスラエルの入植政策を強く非難する決議の準備を始めたことだった。海外の報道によれば、その決議案はかなり厳しい内容であり、イスラエルの呑めないものだった。だからそれが安保理にかけられたら、イスラエルは強く反発し、アメリカも拒否権を行使せざるを得なかったに違いない。それがそうならなかったのは、アメリカがイスラエルを説得する一方、パレスチナにも働きかけ、双方が納得いくような妥協案を見つけ、それをイスラエルもパレスチナも受け入れ、議長国のアラブ首長国連盟も納得したからだという。

じっさいイスラエルは、この決議案に従うかのように、当面数か月の間は、入植活動を延期すると発表した。延期であって、中止でないのは、いつかは再開するつもりがあることを匂わせているのだろう。

こうした事情の裏では、イスラエルとパレスチナが、この数週間秘密会談を重ね、入植をめぐって取引をしていたようだ。その中でイスラエルのほうは、入植を延期する代わりに、国際司法裁判所への提訴をやめろとか、いろいろ注文を付け、また、パレスチナ側の財政を考慮して、租税の徴収に協力すると持ち掛けたようだ。

そんな事情がかさなって、今回の決議に至ったわけだが、それについては、イスラエルとそのパトロンであるアメリカも、イスラエルの無法な行為を、国際社会に向かって弁明できないという判断が働いていたと思われる。要するに国際的な世論が、イスラエルの無法な行為を非難し、それに国連の安保理が乗って、イスラエルに待ったをかけたというわけである。






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