晩年のドガの絵には、輪郭がはっきりせず、どぎつい色彩のものが多い。これは、中年時代に始まった視力の衰えがすすみ、半ば弱視気味になったことにともなうものだった。かれは、対象の輪郭を明瞭にとらえることができなかったので、輪郭を曖昧化して、色彩で対象を再構成しようとした。それもかなり強烈な、原色主体の色彩である。
「青い踊り子たち(Danseuses bleues)」と題されたこの絵は、踊り子の輪郭があいまいであり、背景も単純化されている。そのかわりに色彩は強烈だ。青、赤、黄色といった原色を無造作に配し、全体として雰囲気が伝わるように工夫されている。
「青い踊り子」と題された作品は他にもあり(プーシキン美術館蔵)、ドガが原色主体の踊り子像を好んでいたことが察せられる。
(1890年頃 カンバスに油彩 85.0×75.5㎝ パリ、オルセー美術館)
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