またも提案?入管法改定

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雑誌「世界」の最新号(2023年4月号)に、「またも提案?入管法改定」と題した座談会の筆記が掲載されている。今国会に提出された入管法改定案をめぐるものである。イラストレーターの金井真紀、弁護士の児玉晃一、作家の木村友祐が参加している。いづれも何らかの形で難民問題と入管行政にかかわっているということらしい。この三人の口火を切って金井が、「二年前の2021年、多くの市民やメディアが抗議してようやく廃案になったのに、何食わぬ顔をして同じ改定案をまた出してくるとは、ふざけるなという感じですね」と言っている。

たしかに小生もそう思う。二年前に改定案が出されたときには、折から「ウィシュマさん死亡事件」が世間の注目を集め、入管行政の非人道性が批判を浴びたことで、政府がこれをひっこめたという経緯がある。それとまったく異ならないといってよい改定案を、また出してくるというのは、さすがにずうずうしいというべきだろう。

こんな改定案を考える前に、政府は難民の受け入れについてもっと真面目に考えろというのが三人の共通の意見である。日本の難民認定率は1パーセントにすぎない。日本は、曲がりなりにも、難民条約に入っているのだから、事実上難民を受け入れないというに等しい処置をとっているのは、著しく正義に反したことだろう。一方では、外国から労働力を積極的に受け入れながら、難民についてはかたくなに拒否しているというのが、今の日本の実態である。驚いたことに、入管行政と難民審査を同じ機関が行っている。難民を取り締まりの対象とみて、人権保護の対象とは見ていないのだろう。

なぜ、こんなに排他的な対応をとっているのか。児玉は、終戦後の歴史にその鍵があるといっている。終戦直後の在日朝鮮人や中国人への処遇に、今日の難民問題の背景があるというのだ。さらには、戦前の特高警察までさかのぼるという。特高警察による外国人監視の体質が、戦後の入管行政に受け継がれた。そこには、特高の生き残りが、入管部局に横すべりしたという事情も指摘できるようだ。

問題になっている改定案は、難民申請の期間中は本国への送還ができないという規定に例外を設け、すみやかに送還が可能になるようにするというものだ。要するに、手間のかかる難民申請者は、早く追い出してしまおうというのであ
る。

小生は、日本人労働力不足を補うために、外国人労働者を利用しようとする発想にはあまり賛成できない。それでも、いったん労働力として受け入れたならば、人間的な処遇をすべきだと考えている。ましてや難民は、難民条約によって保護の対象となっている人々であり、日本は、その難民条約の加盟国として、難民を保護すべき責任を負っているのであるから、その人たちに人間的な処遇をほどこすことは当然のことと思う。だから、この座談会で言われていることには、大いに納得できるものがある。

1969年から1973年にかけて、四回にわたり入管法改正案が出されたときには、反対運動によって全部廃案に追い込むことができたそうだ。今回もそれと同じことができないわけがないといって、運動を呼び掛けている(児玉)のが心強い。




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