ストーミー・ダニエルスはウーマン・リブのヒーロー

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先日元米国大統領ドナルド・トランプが、3月22日にニューヨークの検察官に逮捕されるといって、支持者に反撃するようにと、自分の運営するソーシャルネットワーキングサービス「トルース・ソーシャル」に投稿したことで、ストーミー・ダニエルスとの間におこっていた数年来のスキャンダルに、あらためて脚光があたった。これは周知のことなので、ここでは詳しく触れないが、何といっても、一介のポルノ女優だった女性が、米国の大統領を苦境に追い込んだというので、彼女の勇気をたたえる言説があちこちに出始めている。これまで彼女は、罵倒されることはあっても、褒められることはなかった。それは、アメリカの男性優位の価値観を、彼女が覆しつつあるという画期的な事態の重みを、さすがに頑迷なアメリカのジャーナリズムも無視できなくなったということだろう。

彼女の勇気をたたえる言説の一つとして、最近Webニュースサイト「Politico」に載った小文「Stormy Daniels, Feminist Hero? By LAUREN LEADER」を紹介したい。この小文は、従来アメリカ政治をめぐって起きたセックス・スキャンダルをとりあげて、それらがことごとく女性に対する圧倒的なバッシングに終わったのに対して、今回は、女性側が権力をもった男であるドナルド・トランプを圧倒しつつある現実に強い印象を受けたといっている。これまででは全く考えられないことが起こりつつある。それには、ストーミー・ダニエルスという女性の、非常に強烈なキャラクターがあることは確かだが、そればかりとも言えない、女性をめぐるアメリカの価値観に大きな変動が生じているのではないか、と匂わせてもいるのである。

彼女の勇敢さは、トランプという巨大な権力を持った男の圧力に決して屈しないという姿勢に現れている。当初はトランプの代理人たちを相手に戦い、それらを豚箱にぶち込むという成果を上げると、次はトランプ自身に立ち向かった。トランプは、彼女を口汚くののしり、彼女を懲らしめてやると脅迫し、その脅迫にそそのかされて、トランプの応援団を標榜する悪党どもが彼女にさまざまな物理的攻撃をしかけ、それに対して彼女は私設ボディガードを雇って対抗している。そんじょそこらのならず者には屈しないと、意気軒昂である。

彼女にそうした姿勢をとらせるのは、彼女には失うべきものがあまりないということに理由があるとこの小文は分析している。ルインスキーをはじめ有力者とのセックス・スキャンダルの渦中に陥った女性たちは、スキャンダルに立ち向かうよりは黙っているほうを選んだ。声を大きくすると、その数倍の声の大きさとなって、彼女たちへの攻撃が激化するからだ。ところがストーミー・ダニエルスはそんな攻撃にひるまない。攻撃されれば、それに数倍する反撃を加える。彼女は、それをショーのように扱い、そのショーが金になることを知っているので、わざと威勢よく振舞うことによって、自分の名声を、どんな意味であろうと、高めることに熱心なのだ。彼女は別に正義感だけではなく、打算によっても行動しているというわけである。

そんな彼女は、アメリカのウーマン・リブを一段高い次元に押し上げた、とこの小文は評価している。彼女を「ウーマン・リブのヒーロー」と呼んでいるくらいだ。そんな彼女の健闘ぶりを見せられると、この分野での日本の後進性を思い知らされる。日本では、たとえば伊藤詩織さん事件に見られるように、女性に対する性的な暴力はまだ大目に見られる傾向が強い。それのみならず、加害者の男ではなく、被害者の女性のほうをバッシングするような文化がまだ根強く残っているのである。(写真は「Politico」から)





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