ハゲタカファンドから物言う株主へ

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東芝が、好意的な相手に事実上身売りして、上場もやめることにしたそうだ。その理由は、いわゆる物言う株主の介入を排除して、自律的な企業運営をしたいということらしい。企業は株主だけのためにあるのではなく、多くの社会的な責任を負っている。その責任を果たすためにも、「物言う株主」の強欲な要求は排除せねばならぬということのようである。そういえば体裁はいいが、実態はそんなものではないだろう。

今でこそ「物言う株主」などと言っているが、かつては「ハゲタカファンド」と呼ばれたものだ。株価が企業価値を下回っている企業については、株価を上回る資産を処分させて利益を吸い取ったり、業績の芳しくない企業については、手荒な手術をして短期的な回復をさせ、株価が上がったところで売り抜けをするというのが、ハゲタカファンドの常套手段だった。それは「物言う株主」と名前は変わっても、基本的には変わっていない。東芝の場合には、人事を通じて事実上会社を乗っ取ろうとしているし、IYホールディングスの場合には、不採算事業を整理して儲けの多い業態に特化させようという動きを見せている。

会社を儲かる体質に改善させることは、日産を回復させたカルロス・ゴーンの得意としたところで、それを物言う株主もまねているということなのだろう。というか、ハゲタカファンドのもともとのやり方をゴーンがまねたということかもしれない。ハゲタカファンドに象徴されるような、利益第一の資本家たちは、とにかく自分がもうかればいいのであって、会社の社会的な責任とか、長期的な存続つまり企業の持続可能性といったことは、どうでもよいことである。

日本政府は最近投資家の保護に非常に熱心になったように見受けられるが、どういうつもりでそんなことをするのか、わかりづらいところがある。この国の政治家たちは、自分たちの政治家としての持続可能性には熱心だが、国全体の持続可能性には無関心のようである。





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