ヴィクトル・ユーゴーといえば、フランスのロマン主義文学を代表する作家であり、また政治的な活躍でも知られている。この石版画は、文学者としてのユーゴーではなく、政治家としてのユーゴーを描いたものだ。ユーゴーは二月革命後の普通選挙で立候補し、みごと代議士に当選したのである。
そのユーゴーを、ドーミエは批判的な目で見ている。ユーゴーは、もともとルイ・フィリップに同情的で、後には熱心なナポレオン支持者になった。この石版画が描かれた時点では、ユーゴーはまだ派手な動きをしてはいないが、かれの保守的な傾向をドーミエはうさんくさく思っていたようだ。
この絵の中のユーゴーは、頭でっかちのキャラクターとして描かれている。人物を頭でっかちに描くのは、ドーミエの得意とすることろではあるが、この絵の中のユーゴーは極端にデフォルメされている。目つきも悪い。ドーミエはユーゴをひどく嫌っていたのではないか。
(1849年7月 リトグラフ 36.4×25.2㎝ シャリヴァリ)
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