KCIA南山の部長たち:朴正煕暗殺を描く韓国映画

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2020年の韓国映画「KCIA南山の部長たち(ウ・ミンホ監督)」は、1979年に起きた朴正煕暗殺事件をテーマにした作品。これはKCIA(韓国中央情報部)の部長金載圭(映画では金規泙キム・ギョピョン)が起こしたものであるが、事件の動機や背景など全貌はよくわかっていない。個人的な怨恨が原因だとか、朴正煕独裁政権の転覆を狙ったアメリカの意向によるものだとか、いろいろ憶測が飛んだが、いまだによくわかっていない。

映画は、基本的には怨恨説を採用し、それにアメリカの意向をからませてある。朴正煕に怨恨を抱いた金規泙が、アメリカの力を利用しながら、朴正煕殺害を決意したというふうに描いている。それゆえ、事件そのものは、ほとんど金規泙の個人的な行為であって、組織的・政治的な背景は前景化していない。あくまで個人的な怨恨による特異な犯罪というふうに解釈されている。全貌がはっきりしない以上、こういう解釈にも一定の理由があるといわんばかりである。

金規泙が朴正煕に怨恨を抱いたのは、朴正煕が自分のライバルにあたる男をえこひいきして、ないがしろにされていると感じたからだということになっている。怨恨の原因は嫉妬にあったというわけである。もしそれが真実なら、韓国の政治権力は極めて脆弱な基盤の上に成り立っていると思わざるをえない。嫉妬が政治を左右するというのは、ありえないことではないが、それが権力の崩壊をもたらすというのは、古代国家ならまだしも、近代国家としてはみっともない話だ。

事件(1979年10月26日)の後、金規泙は即座に軍によって逮捕され、スピード軍事裁判を経て、翌年5月に吊るされてしまった。それを指揮したのは全斗煥である。全斗煥は事件後一気に権力を掌握し、再び長い軍事独裁政権を始めるのである。その全斗煥は、国軍保安長官全斗赫という名で出てくる。

なお、タイトルにある南山は、KCIAのある土地の名である。その土地の名をとって、KCIAを南山と呼び、その長官を南山の部長というわけである。






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