新聞記者:安倍政権のスキャンダルを描く

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2019年公開の映画「新聞記者(藤井道人監督)」は、東京新聞の記者望月衣塑子の同名の著作を原案とした作品。望月衣塑子といえば、官房長官時代の菅義偉に食い下がったことで有名になった人だ。その人が、安倍政権時代に起きたさまざまなスキャンダルについて、彼女なりの立場から批判的に描いたというのが、原作の意義だったようである。そういうスキャンダルは、ドキュメンタリー風に描くと迫力が出ると思うのだが、ここではあくまでもフィクションとして語られるので、ドラマとしてはともかく、社会批判としての迫力はほとんど感じさせない。

それには、主人公である女性記者を、望月自身がかっこよく描きすぎたということもある。女性記者は正義の味方であり、その正義の味方が、悪の巣窟としての安倍官邸を相手に戦うというのは、子供だましに近い発想である。

フィクションであるから、実際に起きた出来事がかなり改変されている。伊藤詩織さんへの強姦事件は比較的事実に即して描かれているが、いわゆるもりかけ問題とか、獣医大学認可問題については、かなり事実を改変して描いている。2019年といえば、安倍晋三がまだ現役首相として権力を牛耳っていた時期であり、安倍を正面から否定的に描くことには、大きなリスクがあったということだろう。それにしても、事実に多大な改変が施されたために、なにが肝心なことなのかがわからなくなってしまっている。時間がたてばおそらく、意味をなさない作品になってしまうのではないか。

安倍をこわがってか、主人公の記者を演じる女優が日本国内には見当たらず、結果として韓国人のシム・ウンギョンにお鉢が回ったということらしい。彼女は日本語も流暢だし、芯の強い女性像を演じきっていて、はまり役といってよいのではないか。






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