ビスマルク氏の悪夢:ドーミエの風刺版画

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「ビスマルク氏の悪夢(Un couchemar de M.Bismarck)」と題されたこの作品は、普仏戦争に触発されて制作したもの。この戦争で、フランスは初戦で健闘したものの、たちまち攻め込まれ、ルイ・ナポレオンが捕虜になるという不名誉な結果となった。そのことで、ナポレオンの第二帝政は崩壊する。

帝政が崩壊するのは喜ばしいことだが、フランスの被った犠牲は悲惨なものだった。この絵は、ビスマルクでさえ悪夢を見ねばならぬほど、この戦争が悲惨だったことをアピールしているようである。そのことでドーミエは、「釘打ち銃の発明者」で見せた戦争の惨禍への強い拒絶感を、もっと劇的な形で表現した。「釘打ち銃」の悪魔は、ここでは死神へと進化している。

死神をよくみると、その表情は喜んでいるように見える。ビスマルクのおかげで、自分の活躍する機会が増えたことを喜んでいるのであろう。一方ビスマルクのほうは、憂鬱そうな表情をしている。現実のビスマルクは、戦争に勝ったことを喜びこそすれ、それを憂鬱なものとは思わなかったのではないか。

(1870年8月 リトグラフ(ジロタイプ) 23.0×25.8㎝ シャリヴァリ) 





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