「草上の朝食(Le Déjeuner sur l'herbe)」と題されたこの絵は、マネの有名な作品{草上の朝食}(1863)のパロディである。原作は巨大画面であるが、こちらは小品。二つのバージョンがある。どちらも同じ大きさ。こちらのほうが、より明るさを感じさせる。セザンヌは、マネのもう一つの有名な作品「オランピア」のパロディも制作しているので、マネにかなりこだわっていたのであろう。
構図はだいぶ違っている。マネの絵は、森の中に四人の男女が配置されているのだが、こちらには十人の男女がいるように見える。また遠景に教会を配置している。その教会を目立たせるために、森の一部が削除され、その部分に青空を描いている。
マネの描いた森は、おそらくパリの都市型森林だと思うが、セザンヌのこの森は、彼が過ごした故郷の森ではないかと推測されている。のちにセザンヌのトレードマークとなる荒々しいブラシワークがすでにうかがわれる。この時期セザンヌは、印象派の画風に追随するのではなく、自分自身の画風を追求していた。
(1877年 カンバスに油彩 21×27㎝ パリ、オランジュリー美術館)
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