アキ・カウリスマキ「マッチ工場の少女」 若い女性の復讐

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アキ・カウリスマキの1990年の映画「マッチ工場の少女(Tulitikkutehtaan tyttö)」は、「パラダイスの夕暮れ」(1986)、「真夜中の虹」(1988)とともにプロレタリアート三部作を構成する。この映画の中のプロレタリアはマッチ工場に働く若い女性である。タイトルには少女とあるが、それを演じているカティ・オウティネンはすでに29歳になっており、どう見ても少女には見えない。映画はその若い女性が、自分をコケにした者たちに復讐するという内容である。

復讐相手は四人である。母親とその連れ合い、自分を妊娠させて捨てた男、カフェでナンパをしかけてきた行きずりの男である。それら4人を、ネズミ捕りを飲ませて殺すのである。ネズミ捕りにそんな殺傷能力があるのか小生にはわからないが、それを水に溶かしたものを、酒や水に混ぜて相手に飲ますのである。

最初に飲ませたのは、自分を妊娠させて捨てた男。その男は彼女にとって最初の男であり、しかも妊娠までさせた。妊娠の事実を男に伝えると、男は始末しろと言って金をよこす。彼女は、他日交通事故にあって流産するのであるが、男への憎しみは晴れない。そこで、男の家に出かけて行って、金を返したうえで、隙をみつけて酒の中にネズミ捕りの液体を混ぜるのである。

その流れでミュージックカフェに入ったところ、若い男がナンパをしかけてきた。その男にもネズミ捕りを飲ませる。なぜかはわからない。おそらく自分でもわかっていないのだろう。

最後に母親の家に行って、母親とその連れ合いにネズミ捕りを飲ます。以上、四人がネズミ捕りを飲んだ後どうなったか、それについては映画は直接描写することはしない。マッチ工場で仕事をしている最中に、刑事と見られる二人の男がやってきて、連行されるところで映画は終わるのである。

母親とその連れ合いが、娘を経済的に搾取している、娘の給料を大部分横取りするばかりか、家事もさせているのである。娘が給料の一部を割いて赤いドレスを買うと、男はののしりながら暴力を振るうし、母親は返品して来いという。そんな仕打ちに耐えられなくなった娘は弟との同居を選ぶ。だが、なかなか気が収まらないので、母親らにネズミ捕りを飲ませるのである。おそらく彼女がネズミ捕りを買った理由は、妊娠させて捨てた男への復讐心からだと思うが、その気持ちがエスカレートして、母親とその連れ合い、果てはナンパしてきた見ず知らずの男にも波及したのであろう。

どうも救いのない映画である。






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